金属類の盗難が増える背景とは? 狙われやすい現場と対策を解説
[このコラムを書いたコンサルタント]
- 専門領域
- 自然災害、防犯
- 役職名
- リスクマネジメント第一部 リスクエンジニアリング第二グループ 上席コンサルタント
- 執筆者名
- 石長 賢一 Kenichi Ishinaga
2026.7.2
近年、金属ケーブルをはじめとする金属類を狙った「金属盗」が増加しています。警察庁のまとめによりますと、令和7年は1万5,712 件に上ります。
こうした中、金属くずの買い受けを行う営業に係る措置に関する規定や、金属盗に用いられる犯行用具の規制に関する規定の整備等を内容とする盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律が成立しています。
このため、企業にとってもこうした金属類の「盗難リスク」への防犯対策がこれまで以上に求められるようになっています。
そこでこのコラムでは、盗難リスクが高まる背景やリスクを減らすための対策などについて、MS&ADインターリスク総研の盗難対策のコンサルタントを務める石長が、わかりやすく解説します。
流れ
- なぜ高まる金属類の盗難リスク?
- 盗難の標的になりやすい金属類と施設は?
- 防犯設備があっても安心はできない
- 「トクリュウ」による犯罪にも注意が必要
- 盗難リスクを減らすために見直したい対策とは?
- まとめ:各施設のリスクを把握し対策の見直しを
なぜ高まる金属類の盗難リスク?
金属類の盗難リスクが高まる背景には、近年高騰する金や銀などの貴金属、銅などの金属価格があります。
金属スクラップの価格の推移


出典:警察庁「金属等対策に関する検討会報告書」令和7年1月 金属等対策に関する検討会
警察庁によると、上のグラフのように金属スクラップ価格がいずれも上昇傾向にあり、特に銅の価格が高水準に推移していて、高額で取引されているということです。
金属類は換金性が高く、加工されると識別が難しくなるため、保管場所や管理方法によっては、犯罪者にとって格好の標的となるおそれがあります。
特に、事業所や倉庫、店舗などで貴金属やその原材料を取り扱う場合、警備体制が不十分だと盗難被害につながる可能性があります。
警察庁のまとめでは、下のグラフのように令和2年から令和6年までの金属盗の認知件数は増え続けており、一定の警備設備があるにもかかわらず盗難被害が発生するケースがあります。また、2016年に福岡県内では、貴金属の輸送中に襲撃されるケースも確認されています。
金属盗認知件数の推移


出典:警察庁「金属等対策に関する検討会報告書」令和7年1月 金属等対策に関する検討会をMS&ADインターリスク総研で加工
盗難の標的になりやすい金属類と施設は?
警察庁によると、2023年(令和5年)に盗難に遭った金属類の半数以上が金属ケーブルで、材質別で見ると銅が過半数を占めていたということです。
品目別・材質別の被害状況


出典:出典:警察庁「金属等対策に関する検討会報告書」令和7年1月 金属等対策に関する検討会
金属ケーブルやグレーチングなどは太陽光発電所や建設現場で狙われる傾向があります。その理由としては、こうした施設や場所では、夜間に無人となりやすいため、侵入されても発見が遅れ、盗難の標的になりやすいといったことが挙げられます。
防犯設備があっても安心はできない
防犯カメラや警報装置などの設備があっても、盗難リスクを完全になくすことはできません。
たとえば、以下のような場合には被害につながる可能性があります。
- 防犯カメラなどによる監視の死角がある
- 施錠や入退室管理が徹底されていない
- 夜間巡回や財物の確認体制が十分にできていない
つまり、防犯設備の設置を強化するだけでなく、運用面を含めた防犯体制の見直しが重要になります。
「トクリュウ」による犯罪にも注意が必要
さらに近年は、「トクリュウ」と呼ばれる匿名・流動型犯罪グループによる強盗や侵入窃盗も多発しています。
2024年(令和6年)の警察白書によると、「警察では、匿名・流動型犯罪グループが組織的窃盗・盗品流通事犯にも関与している可能性を視野に、実態解明を進めている」としていて、増加する金属盗の裏にトクリュウが関係している可能性もあります。
トクリュウによる犯罪は、末端の実行役のみを検挙したとしても、指示役や資金源の解明に至りにくいという特徴があります。加えて、凶悪化しやすく、複数人で襲撃するなど大胆な犯行に及ぶこともあるため、社会的影響も甚大であり、従来以上の警戒が求められます。
盗難リスクを減らすために見直したい対策とは?
盗難対策では、ハード面とソフト面の両方を見直すことが重要です。
ハード面の対策
- 施錠設備の強化
- 防犯カメラの設置・死角の確認
- センサーや警報装置の導入
- 照明の整備
- フェンスや侵入防止柵の設置
ソフト面の対策
- 入退室管理ルールの整備
- 鍵の管理方法の徹底
- 夜間・休日の巡回体制の見直し
- 盗難発生時の初動対応手順の明確化
- 輸送時の警備方法の確認
特に重要なのは、「どこが狙われやすいか」を現場ごとに把握し、実態に合った対策を取ることです。
まとめ:各施設のリスクを把握し防犯対策の見直しを
金属類をめぐる盗難リスクは、価格高騰を背景に今後も注意が必要です。
事業所、倉庫、店舗、太陽光発電所、建設現場などでは、保管・管理・搬出入の各段階や場所において犯罪に対する脆弱性が生じるため、被害防止には状況に応じた防犯対策が重要です。
MS&ADインターリスク総研では、貴金属や金属類などの盗難リスクに備えた現地調査(盗難リスクサーベイ)を実施しています。
調査対象施設の防犯体制における脆弱性を把握し、ハード面とソフト面でそれぞれの対策をご提案します。
また、必要に応じて盗難シナリオに基づく被害想定額の算出も可能です。お気軽にご相談ください。