中国商標法改正のポイント
2026.10.28
2026年6月26日、中国における商標の登録、使用・保護等に関する基本的なルールを定めた「中華人民共和国商標法」が可決された。1983年の施行以来、初めての全面改正であり、2027年1月1日から施行される。
今回の見直しの背景には、他社の商標を先取りする目的での出願(悪意出願)や大量出願の増加、インターネット上での商標使用の広がり等により商標の審査・登録・管理における実務上の混乱や、権利の形骸化、不使用商標の増加等の問題が生じていたことがある。改正後は、商標を登録するだけでなく、実際に使用し、適切に管理することがより重要となる。
改正法では、商標の範囲が明確化されるとともに、悪意出願や不使用商標への規制などが強化される。主な改正のポイントは以下のとおり。
| 改正法のポイント | 内容 | 該当条文 |
|---|---|---|
| ① 商標の定義・使用の範囲明確化 | ECサイト、SNS、Web広告などの使用も商標使用に含まれることを明文化 | 第2条 |
| ② 悪意出願の規制強化 | 使用目的がなく、かつ、通常の生産・経営上の必要性を明らかに超える出願を拒否 【制裁内容】 警告、10万元以下の罰金 |
第19条 |
| ③ 先使用商標・先行権益の保護 | 他人の既存権益を害する出願を禁止 契約関係等を利用した抜け駆け登録も規制 |
第22条 第24条 |
| ④ 異議申立期間の短縮 | 公告後の異議申立期間が3か月から2か月へ短縮 | 第36条 |
| ⑤ 不使用商標の職権取消 | 正当な理由なく3年間不使用の登録商標を行政が職権で取消可能 【制裁内容】 是正命令、5万元以下の罰金、取消 |
第57条 |
| ⑥ 無断変更・誤導的使用の規制 | 登録商標、名義、住所などを無断変更した場合や、公衆を誤認させる使用を規制 【制裁内容】 是正命令、最大25万元の罰金、場合により取消 |
第56条 第57条 |
| ⑦ 証拠収集権限の強化 | 行政機関が帳簿、電子データ等を閲覧・複製可能 | 第76条 |
出典:中国国家知識産権局「《中華人民共和国商標法》改正の主な内容」、「中華人民共和国商標法(2026年改訂)」を基にMS&ADインターリスク総研にて作成
本改正により、悪意出願への規制が強化されたことで、企業にとってはブランド防衛の実効性向上が期待される。
一方で、正当な理由なく3年以上使用していない登録商標は、取消の対象となり得るほか、名義・住所の変更漏れがある場合も権利維持の面で注意が必要である。加えて、ECサイト、SNS、Web広告等での使用も商標使用に含まれることから、オンライン上での使用実態を示す証拠の保存もより重要となる。
こうした点を踏まえ、中国市場で事業を展開する日本企業においては、改正法の内容や今後の運用状況を注視しながら、商標の保有・管理状況の棚卸、使用実態の確認、証拠資料の保全、契約関係の見直しを行うことが望ましい。
【参考情報】
2026年6月26日付 中国国家知識産権局 HP:「中華人民共和国商標法(2026年改訂)」
https://www.cnipa.gov.cn/art/2026/6/26/art_3686_206940.html
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