レポート/資料

高温作業時の熱中症予防対策【中国風険消息<中国関連リスクニュース>(2026年9月)】

[このレポートを書いたコンサルタント]

会社名
インターリスク上海
執筆者名
主管 葛永正

2026.9.2

要旨
  • 近年、中国でも地球温暖化の影響により、極端な高温となる日が頻発しており、高温に起因する従業員の熱中症、さらには死亡事故も発生している。これに伴い、職業性熱中症は、社会・公衆衛生分野における重要な課題の一つとなっている。
  • 本稿では、2025年の高温気候の特徴および2026年夏季の高温傾向を踏まえ、国家関連基準に基づき、職業性熱中症の定義、分類および発症メカニズムについて解説するとともに、企業における高温環境下での作業実態およびリスク要因を分析した。
  • さらに、リスクの特定、技術的対策、管理体制、健康管理措置および応急対応等、多面的な熱中症予防対策についても整理した。事業者が暑熱対策に関する管理体制を構築・強化する際に参考としていただくとともに、従業員の健康確保の推進にお役立ていただきたい。

1.高温気候の振り返りと今夏の高温傾向予測

(1)2025年高温気候の振り返り

地球温暖化等の影響により、中国における年間平均気温は上昇している(図1)。特に、2021年以降の年間平均気温は、1991~2020年の平均気温から徐々に高温側に乖離する傾向にある。これに伴い、近年、屋外作業に従事する従業員の健康リスクも高まっているといえよう。

図1 全国平均気温の推移(1951年~2025年)

全国平均気温の推移(1951年~2025年)
全国平均気温の推移(1951年~2025年)

(出典:三張図均出自中国気候公报(2025年))

2025年の年間平均気温は、2024年と並び観測史上最高値となった。近年の高温の特徴として、以下の3点が挙げられる。

① 影響地域の広域化

長江中下流域全体で平均気温が過去最高を更新し、江蘇・浙江・上海など東部沿岸地域では、相次いで最高気温を更新した。華北南部、華東、華中、華南の大部分では、最高気温が35℃以上となる「高温日数」が20~50日に達し、平年同期より10~40日多くなった。山東省、河南省、湖北省などでは、夏季の高温日数が地域の観測史上最高値を更新した(図2)。

② 高温期間の長期化

6月から10月にかけては、最高気温35℃以上の日数は平均16.5日であった。これは平年より7.4日多く、観測史上最多である。主要な高温期間は6月30日から9月9日に集中し、連続期間は72日に達して観測史上第3位となった。10月に入っても江南地域および華南北部では40℃を超える極端な高温が発生し、秋季まで高温が継続する傾向が顕著であった。(図3参照)

図2 2025年全国高温日数平均分布
(単位:日)

2025年全国高温日数平均分布(単位:日)

図3 2025年6月30日~9月9日の全国高温日数分布
(単位:日)

2025年6月30日~9月9日の全国高温日数分布(単位:日)

(図2、図3 出典:三張図均出自中国気候公报(2025年))

③ 高温による熱中症リスクの高まり

広範囲にわたる継続的な高温に加え、高湿度環境が重なることで、人体の蓄熱速度が大幅に高まっている。屋外作業や密閉された作業場に従事する従業員の熱中症リスクが高まっている。

(2)2026年夏季における高温状況について

2025年の極端な猛暑は、一時的な気象現象ではない。エルニーニョ現象の発生状況および政府による気象分析結果を踏まえると、2026年夏季も全国的に高温への警戒が必要である。以下に2026年夏季における高温の特徴を整理する。

① 全国的に平年より高い気温

中程度以上のエルニーニョ現象の影響により、気温上昇傾向がさらに強まり、全国的に平年より高い気温となる見込みである。また、局地的な高温熱波が多発する可能性がある。

② 重点的なリスク地域

6~8月にかけて、華東および華南地域では、厳しい暑さが長期間継続するほか、高温となる期間が複数回発生すると予測されている。長江デルタ地域および福建省北部では、高温日数が27~32日に達すると見込まれており、平年を大きく上回る高温環境となる可能性がある。

③ 体感温度上昇による熱中症リスクの高まり

上記地域では、晴天と降雨が短期間のうちに入れ替わる不安定な天候が続くことで、気温・湿度が上昇し、高温多湿環境となることが予想される。高湿度は身体から熱を放散しにくくし、熱中症発症リスクを高めるため、適切な予防対策を講じる必要がある。

2.職業性熱中症の定義と分類

高温がピークとなる時期には、屋外工事現場、外勤業務、密閉空間および加熱設備を有する作業場等において、熱中症リスクが上昇する。熱中症の発症メカニズムや症状を正しく理解することは、効果的な予防・管理対策を実施するために重要である。

(1)職業性熱中症の定義

残り7404文字
この先は「続きを読む」を押してください。

PDFでもご覧いただけます