コラム/トピックス

AGV導入前に考えておきたいこと 〜リスクと安全対策のポイント〜

[このコラムを書いたコンサルタント]

大嶋 智也
専門領域
運輸安全マネジメント、運輸総合コンサル、自動運転、
空飛ぶクルマ、
ドローン など次世代モビリティ
所属
インターリスク上海
執筆者名
副総経理 大嶋 智也 Tomoya Oshima

2026.8.7

近年、中国では製造業や物流業を中心に、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)の導入が急速に進んでいる。人手不足や人件費の上昇、生産性向上へのニーズを背景に、自動車、電子部品、半導体、食品、医薬品、物流など幅広い業種で導入が進み、工場や物流現場の自動化を支えている。

先日、訪問先の担当者から、「夜間にAGVを充電していた際に発火したケースがあった」という話を伺った。幸い大事には至らなかったものの、AGV導入においては生産性だけでなく、安全面についても十分な検討が必要であることを改めて認識する機会となった。

私自身、中国の日系企業を対象としたリスクコンサルティング業務の中で、AGVを導入した工場や物流倉庫を訪問する機会が年々増えている。現場では、人手不足への対応や搬送効率の向上など、導入効果を実感する声が多く聞かれる一方、リスクマネジメントの視点から見ると、新たな課題も見えてくる。

AGVのリスクというと、人との接触事故を思い浮かべる方が多い。しかし実際には、それだけではない。走行ルートやレイアウトの変更に伴う工場設備やラック等との接触、センサーや通信異常による停止、複数台を統合制御するシステムの不具合による業務停止、さらにはリチウムイオン電池や充電設備に起因する火災など、リスクは多岐にわたる。

また、中国で公開されているAGV関連の事故調査報告書を確認すると、多くの事故はAGVそのものの故障だけが原因ではなく、人とAGVが混在する作業環境、保守点検の不足、運用ルールの未整備、システム設定の不備など、複数の要因が重なって発生していることが分かる。当社がリスク調査を実施した際にも、担当者から「AGVが誤作動して壁に衝突した」「走行ルートの変更後に停止が頻発した」といった事例を耳にすることがあり、公開されている事故調査報告書には表れないヒヤリ・ハット事例も少なくない。つまり、AGVは「導入すれば安全になる搬送設備」ではなく、「適切な運用管理によって初めて安全性を発揮する設備」と言える。

そのため、AGV導入時には、AGV・AMRの性能や価格だけで判断するのではなく、人とAGVの動線計画、安全装置の機能確認、充電設備を含めた設備管理、異常時の対応手順、保守点検体制、作業者に対する教育などを総合的に検討することが重要である。導入後についても、定期的に運用状況を確認して改善対策を行ったり、変化点(レイアウト変更等)を踏まえてリスクの抽出と対策を行うなどにより、継続的に改善していくことが事故防止につながる。

MS&ADインターリスク総研及びインターリスク上海では、AGV・AMRの導入を検討される企業に対し、導入前のリスクアセスメントから導入後の安全管理まで、一貫したリスクマネジメント支援を行っている。AGV・AMR等の搬送設備導入の効果を最大限に引き出すためには、生産性向上だけでなく、安全な運用を見据えた計画づくりが欠かせない。AGVの導入を検討される際には、設備選定だけでなく、安全管理や運用体制の構築も含め、リスクマネジメントの観点から検討いただきたい。

(2026年7月30日三友新聞掲載弊社コラム記事を転載)

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