レポート/資料

「重大火災危険性判定規則」を踏まえた企業対応のポイント【中国風険消息<中国関連リスクニュース>(2026年7月)】

[このレポートを書いたコンサルタント]

会社名
インターリスク上海
執筆者名
高級経理 楊奥

2026.7.6

要旨
  • 近年、中国では重大な火災事故が頻発している。重大な火災は、多数の人的被害、財産損失、深刻な社会的影響を引き起こすものである。
  • 今回、新たに改訂された「重大火災危険性判定規則」(GB35181-2025)(以下「新規則」と略称する)は、法的拘束力を持つ国家標準として、2025年11月1日より正式に施行され、これまでの「重大火災危険性判定方法」(GB35181-2017)に取って代わるものである。新規則は、規則の枠組みや構造、判定項目、適用範囲等の面で体系的に改訂され、企業に対して、より高いレベルの消防安全管理を求めている。
  • 本稿では、この新規則の構成や内容を解説するとともに、新規則を踏まえた企業の対応ポイント/留意事項を整理する。
  • インターリスク上海では、この新規則を踏まえた現状の防災対策の有効性評価、コンサルティングを行っており、是非、ご活用頂きたい。

1.特別重大火災および重大火災とは

新規則の名称は、「重大火災危険性判定規則」という。規則名にある「重大火災」とは何であろうか。2025年5月施行の「火災統計管理規定」では、火災による人的被害、被災世帯数、直接財産損失等に基づき、火災は4つの等級(一般、大、重大、特別重大)に分類されており、新規則が対象とするのは「特別重大火災」および「重大火災」であるが、それらは以下の通り定義されている。

名称 死者数 重傷+死者 被害世帯数 直接財産損失
(RMB元)
特別重大火災 30人超 100人超 100戸超 >3億元超
重大火災 10~30人 50~100人 50~100戸 1~3億元

上記定義に基づき、2018年から2025年までの「重大火災」以上の事故件数及び原因に関する統計データを、当社にて以下のとおり整理した。

(1)火災統計

2018年から2025年の間に、毎年「特別重大火災」または「重大火災」が発生し、8年間の合計は33件に上る。また、年間の重大火災事故の件数は5件を超えることはないものの、死者数は毎年50人以上に達している。さらに、「特別重大火災」や「重大火災」により、企業の倒産、従業員の失業、世論への多大な影響、そして公共の安全や都市治安に影響することも多く、その影響は火災そのものにとどまらない。

図1.2018~2025年の重大火災以上の統計データ(政府資料より)

2018~2025年の重大火災以上の統計データ(政府資料より)
2018~2025年の重大火災以上の統計データ(政府資料より)

(2)火災の原因

「特別重大火災」「重大火災」を引き起こす原因は多岐にわたるが、中でも火気使用作業による火災と電気火災が最も多く、合わせて55%と半数以上を占める。火気使用作業による火災の原因は主にルールの逸脱や監督の不行き届き等によるものであり、電気火災の原因は主に過大な電力負荷、配線の接触不良、または配線の絶縁不良によるショートや漏電等である。したがって、新規則では、火気使用作業の適切な管理と、電気火災防止のための明確なルールが盛り込まれている。

図2.2018-2025年重大・特大火災発生原因統計(政府資料より)

2018-2025年重大・特大火災発生原因統計(政府資料より)
2018-2025年重大・特大火災発生原因統計(政府資料より)

このような「特別重大火災」「重大火災」に至る原因を踏まえ、中国政府は新規則を発表し、このなかで用語解釈において「重大な火災危険」という言葉の定義を明確にした。定義によれば、「消防法規に違反し、消防技術基準を満たさず、重大または特別に重大な火災事故や深刻な社会的影響を引き起こしやすい様々な潜在的な不安全要因」とされる。もう少しかみ砕いていえば、「ひとたび火災が発生すれば多数の死傷者を出しかねない潜在的なリスク」を「重大な火災危険」と定義した。規則には、「重大な火災危険」に関する具体項目が列挙されており、これを参考に、企業は多数の死傷者を出す火災事故の発生を防ぐことが求められている。

2.「規則」改訂の背景

今回の改訂に至る背景や要因は以下の二つが挙げられる。

(1)関連する法規や技術基準との整合を取る必要性

関連する消防法規、消防技術基準が新たに制定されたり、改訂されたりしたことに伴い、重大な火災危険の判定方法の適用において齟齬が生じていた。例えば、近年新たに制定された「建築防火通用規範(GB55037)」や「消防施設通用規範(GB55036)」等では、一部の重大な火災危険判定項目が変更され、新規則の旧版にあたる「重大火災危険性判定方法(GB35181-2017)」に示されていた多くの判定項目が陳腐化し、判定根拠が無効・薄弱となったり、基準の食い違いが生じたりする等の問題が起こっていた。

(2)近年の大規模火災事故からの教訓の反映

新規則の旧版にあたる「重大火災危険性判定方法(GB35181-2017)」の実施から8年が経過し、その間に、我が国の消防安全状況は著しい変化を遂げた。都市化の進展に伴い、高層ビル、大型商業複合施設、地下空間等の複雑な建築タイプが増え続け、火災の危険要因も多様化・複雑化する傾向にある。特に電動自転車に関する火災リスク、大型複合施設における防火管理の複雑さに起因する火災リスク、新エネルギーを使用した車両や、蓄電池等の普及に伴う火災リスク等、これまで見られなかったような新たな火災リスクが増加している。こういった状況を踏まえ、国家消防救援局は、規則の改訂に伴う記者会見で「今回の改訂は2017年版基準を総括した上で、火災事故の教訓を全面的に反映することを目的としている」と述べた。なお、過去3年間を振り返ると、国内では多数の典型的な重大火災事故(2023年の江西省新余「1・24」特大火災、2024年の河南省南陽市老人ホーム火災等)が発生し、既存の判定基準が新興施設、新業態、新材料等の分野でカバー不足であることが明らかになっていた。

3.「規則」の新旧バージョンの違い

新規則では、近年の工場や集客施設等における火災事故の教訓を踏まえ、旧版基準に存在した判定の曖昧さや、先述したような「新たな火災リスク」への対応不足等、多数の問題について体系的に変更を行った。下表はそれらの変更点を整理したものである。

種類 GB35181-2017(旧) GB35181-2025(新) 変更ポイント
用語 「重要場所」等の曖昧な用語が存在
  • 曖昧な用語をできるだけ排除
  • 「労働集約型企業」「多業態混合生産経営」の定義を新たに追加
火災リスクに関する環境変化を踏まえた用語の追加や具体化がなされた
判定
プロセス
複数人での討議と専門家による判定 判定手順がより明確 手順に従うことで判定が可能となった
直接判定 10項目(場所分類なし) 30項目(場所別) カバー範囲がより広くなった
総合判定 39項目 35項目 項目が整理され、判定プロセスがより簡潔になった
除外事項 除外される事項が具体的でない 除外される事項が明確に定義されている 誤った判定を避けることが可能となった
新たな観点 当時の状況を踏まえて策定 新たに電動自転車やリチウム電池に関するリスク等の災害要因を追加 近年の重大火災から得られた教訓を新基準の内容に反映しており、時代と共に進化した内容となっている
付録 無 新規付録Aを追加し、具体的な判定手順を明確化した 曖昧さをできるだけ排除し、明確で統一的な基準が示された
適用主体 主に消防等組織において使用される 政府、企業、社会単位及び個人に適用 社会全体が消防安全責任制に包括され、社会全体でリスクを排除することを目指すもの

4.大規模火災の危険性判定手順

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