企業緑地とCSR~企業による自然環境保全活動活発化のゆくえ~
[このコラムを書いたコンサルタント]
-
- 専門領域
- 環境リスクを低減する社会制度および技術の研究/良好な自然環境を保全・創出するための社会制度および技術の研究
- 役職名
- 環境部 主任研究員
- 執筆者名
- 原口 真 Makoto Haraguchi
2008.4.1
企業の社会的責任(CSR)に対する取り組みが重要な経営課題となりつつあることを背景に、緑地を活用した社会貢献・コミュニティ投資活動を始める企業が増えており、企業緑地活用コンサルティングを行う当社にも相談が寄せられている。
社歴が長い企業は、業種にかかわりなく、事業所、保養所、研修所などに緑地を保有し、また資源採取用、開発予定地としての塩漬けになった山林もかなり保有している。
こうした緑地の多くは、いままでは本業に貢献することはほとんど期待されなかったが、経営に余裕があった時代が去り、その管理責任が負担になっている。とはいえ容易に買い手がつくような立地でなかったりする。したがって、保有し管理する責任が続くのであれば、CSR活動に活かして企業価値の向上に少しでも貢献できればと考えるのは当然のことであろう。
一方、身近な自然の喪失や生物多様性の減少が、私たちの快適な生活基盤を突き崩すほどのスピードで深刻化しており、このような企業の取り組みは地域から大いに期待されている。
こうした企業のやる気と社会のニーズがうまくマッチしてこそ、CSR活動として定着するのであるが、省エネルギーやリサイクルのように集中的な投資でパフォーマンスが大きく改善する環境保全活動と異なり、相手が生き物であるので(子育てと同じく)お金さえかければうまくいくとは限らない。自然環境の情報を読み取る愛情と根気強さが必要である。
緑地を活用して、社会と本業への貢献に成功している企業の特徴はふたつ。
- 担当者が緑地を守り、育てることの地球的な意義を理解し、やりつづける気持ちであること。
(実際は担当しているうちに本気になる人が出てくる。人間の本能かもしれない。) - 顧客サービスや社員研修など本業でも使い、地域への開放やNPO・専門家との協同作業など社会に開き、
社内外のステークホルダーを巻き込みつなげていること。
先ごろ改定されたISO14001でも、その付属書において「野生生物及び生物多様性」に影響を及ぼす環境側面の洗い出しが薦められており、CSRブームと相まって、企業の自然環境保全活動がますます活発化し、自然豊かな生活環境を日本に取り戻すパワーとなることが期待される。
以上