CSR経営の"リスクと機会"に関する最新動向【新エターナル 第28号】
2012.8.1
1. はじめに
CSR経営における"リスクと機会"の事例を(図表1)に示します。本稿では、まずCSR経営において参照すべき最新の各種規格やガイドライン・論文で、"リスクと機会"に関してどのように記述しているのかについて概説します。わが国では2003年が"CSR元年"と言われましたが、当初は(図表2)の下部に示す法令順守、リスクマネジメント、内部統制、そして社会貢献等が主なCSR取組事項であったため「守りのCSR」とも言われています1。この「守りのCSR」では、一般的にCSR経営とは企業活動から生じる悪影響("リスク")を緩和すること、また企業の「善行」として社会貢献に取り組むことなどと(狭く)理解されている傾向にあります。しかし以下に述べる最新動向を踏まえると、今後のCSR経営では、社会のニーズや期待への対応、そして社会・環境問題の解決にも貢献する本業を通じた「攻めのCSR」を展開できれば、それはビジネス機会となり、企業競争力の強化や収益力の向上、そして企業価値の向上にも繋げることができるのです。
2. CSR経営において参照すべき最新の各種規格やガイドライン・論文での"リスクと機会"
(1) ISO26000(社会的責任)3での"リスクと機会"
2010年11月1日、社会的責任(SR:Social Responsibility)の世界標準であるISO26000が発行し、わが国では2012年3月21日、JIS規格として制定されました。この規格は、社会的責任とは何か、そしてそれを実施する上で組織が何に、またどのように取り組むべきなのかに関する手引(ガイダンス)を提供する国際規格であり、組織の業種・規模を問わず利用できます。本規格では、社会的責任の7つの中核主題(「組織統治」「人権」「労働慣行」「環境」「公正な事業慣行」「消費者課題」「コミュニティへの参画及びコミュニティの発展」)に関して解説していますが、その解説の前の「ボックス5」において、組織にとっての社会的責任の利点("リスクと機会")が(図表3)の通り列挙されています。この(図表3)からも社会的責任は、その対応の如何によって経営上の"リスクと機会"に直結することがわかります。
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