レポート/資料

落雷による被害の動向と対策について【災害リスク情報 第62号】

2014.12.1

1. はじめに

大気の状態が不安定になり、落雷や突風、そして局地的な激しい雨に見舞われる気象現象がここ数年多く観測されている。2014年6月29日には、関東から東北にかけての広い範囲で大気が乱れ、東京都心から埼玉県北部にかけて雷を伴う激しい雨となり、冠水と落雷が各地で発生した。この時の落雷によって、東京都、埼玉県、茨城県にかけて一時的に一万世帯以上に及ぶ停電が発生した。東京都営地下鉄三田線では、落雷が影響とみられる保安装置の故障によって、一時全線で運転を見合わせる事態に至っている。2014年9月4日から5日にかけて、和歌山県では前線の通過に伴い激しい雨と落雷に見舞われ、和歌山電鉄では落雷の影響で踏み切りが故障し、貴志川線は始発から上下各13本が運休となり、通勤、通学で利用する約2千人以上に影響を与えた。2014年8月17日、岐阜県関市で民家が全焼する火災が発生したが、落雷で停電が発生した後に屋外の電気メーター付近から火の手が上がるところが確認されており、雷が原因の火災とみられている。

落雷に関してニュース等で取り上げられるのは、列車の運行停止や人的な被害が発生した場合が多いが、実際にはそのほかにも多くの被害が発生している。近年、誘導雷あるいは逆電流と呼ばれる現象によって電源配線や通信配線に瞬間的に生じる高電圧の電流(雷サージ)が原因となり、建物、工場、レジャー施設などの電気設備に多くの被害が及んでいる。被害情報をまとめてみると、落雷による被害(雷害)には原因がわかりにくい事例がある反面、被害にあう設備には一定の傾向も認められることがわかってきた。

本稿では、実際の被害データを示し、主として誘導雷などによる雷サージに対する対策について述べる。

2. 雷の種類

雷は、発生のメカニズムによっていくつかの種類に分けることができる。基本的には、上空に発生した厚い雲の中で、氷粒が互いにぶつかり合って帯電し、蓄積された電気エネルギーが地上に放電されることによって雷となる。雷の分類にはいくつかの方法があるが、気象条件の違いにより分類される次の3種類が代表的なものである。

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