レポート/資料

2011年度 No.3「リスクの分析指標(発生頻度・影響度)の作り方(2) 」

2011.12.1

1. はじめに(解説の前提)

前号では、リスク分析の指標のひとつである「発生頻度」の作り方について解説した(「企業リスクインフォ」2011年度第2号)。本稿は、主に前号の続きとしてリスク分析指標のひとつである「影響度」の作り方について解説を行うものである。

一般的に、影響度の分析指標の方が発生頻度の分析指標よりも多種多様である。企業、自治体、学校、医療法人等の組織(以下「組織」という)により影響度の分析指標は大きく異なる。また、同じような組織であっても、業種や組織規模等により大きく異なる場合が多い。したがって、リスク分析指標の作り方に正解はない。本稿においては、例外がたくさんある中で一般的と思われる組織について、筆者の考え方を紹介するものである。

2. 経済的な影響を測る分析指標

影響度を測る指標はいくつか存在するが、その中で最も一般的であり、定量化し易い指標は経済的な指標である。通常は、以下表1のように金額(円単位)で表される。

以下では、具体的な企業の財務データの例を交えながら、何を基準に表1のような経済的な影響を測る指標を作成すべきかについて考察を行いたい。

図1は、架空の企業財務データである。このような企業の場合、どの財務データを基準に経済的な影響の指標を作成すべきであろうか。

「売上高」「営業損益」「経常損益」「税引前当期純損益」のどの財務データを基準にするかにより、考え方は分かれる。正解はないため、どの財務データを基準に考えていってもよいが、筆者は「営業損益」または「経常損益」で考えていくことが多い。その理由を解説する前に、リスクアセスメントを行う上で、それぞれの財務データが持っている性質を「ステークホルダーの関心度」「社内における認知度」「データの適切さ」の3つの観点から整理してみると以下表2の通りとなる。

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