HRデータを活用し人的資本経営・開示の質を高めるために必要なこと

HRデータ活用のための要件と課題

1. データ活用に必要な要件
   HRデータを活用した人的資本経営・開示を実践するためには、次の２つが必要です。
   • 「HRデータの“見える化”の仕組み」
     前述のとおり、人事における課題解決や施策を検討していくためには、そもそも必要なデータが可視化され、分析できる状態になっている必要があります。課題の原因を検討するために仮説を立て、施策の効果を検証していくためにはHRデータによる裏付けが不可欠です。
   • 「HRデータから課題を読み解く力」
     また、HRデータを分析するためには、人事に関する知見と併せ、HRデータを分析するための分析力を持った要員も必要となります。
     
     
2. データ活用における課題
   一方、上記のHRデータ活用にあたり、企業において大きく２つの課題があります。
   • 「システム・データのバラバラ問題」
     多くの企業では、人事分野に関し、労務・給与・人事評価など様々なシステムを別々に導入しているケースが見受けられます。異なるシステムにHRデータが偏在しているため、これらを横断的に分析するにはかなりの手間がかかります。
   • 「HRデータ分析人材の不足・不在」
     また、HRデータの分析に特化した経験・スキルを持つ人事の担当者はまだ少なく、このような要員をどのように確保・育成していくのか課題となります。

HRデータ活用を実現するための解決策

それでは、これらの課題にどのように取組めば良いのでしょうか。それぞれの課題について解決策を示します。

1. 「システム・データのバラバラ問題」への解決策
   複数のHRシステムでデータが分散している課題については、HRデータを統合管理・可視化する機能を持つ「BIツール」や「タレントマネジメントシステム」を新たに導入する、または既存のシステムから「統合型の人事システム」に入れ替えて一元管理するという選択肢があります。
   「BIツール」は既存のHRシステムに変更を加えることなく、横断的な連携が可能となります。「タレントマネジメントシステム」は、社員の能力やスキルを一元的に管理することが可能となります。「統合型の人事システム」は１つのシステム上で統合的に管理できますが、既存システムのリプレイスの手間やコスト面で検討を要します。
   
   
2. 「HRデータ分析人材の不足・不在」への解決策
   HRデータ分析人材の不足・不在問題に対しては、「データアナリストの新規採用」、「分析スキルに精通した人事担当者を育成」、「外部コンサルタントへの発注」といった選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社の現状に合った解決策を選択することが重要です。
   
   

まずは、自社の人的資本経営・人事戦略の遂行にあたって、どのようなHRデータの分析・活用が必要となるのかを明らかにし、その上で、上記のような課題・解決に向けて基盤の整備を進めていくことが望まれます。

【関連情報】
人的資本・健康経営インフォメーション ＜2023 No.3＞「人的資本経営・開示におけるデータ分析基盤構築の必要性」
https://www.irric.co.jp/pdf/risk_info/health/2023_03.pdf