コラム/トピックス

東証でカーボンクレジット市場が開設、GHG排出量を取引

2024.3.26

カーボンプライシング構想の実現に向けた一歩~GHG排出量削減への寄与に期待

2023年10月11日、東京証券取引所でカーボンクレジット市場が開設されました。本市場は温室効果ガス(GHG)の排出量を、CO2量に換算して1t単位で取引するもので、民間企業や自治体など、200を超える団体が参加しています(11月10日現在)。初日の取引では3,689 tの売買が成立しました。

市場の売買対象はJ-クレジット 注1)であり、売買区分は「省エネルギー」、「再生可能エネルギー(電力)」、「再生可能エネルギー(熱)」、「森林」、地域版J-クレジットなどを含む「その他」の計5区分となっています。これまでJ-クレジットは相対取引が中心であり、流動性の低さと価格公示がなされない点が課題でしたが、今般、取引所取引への移行によりこれらの課題は解消されました。

これは、2023年度から開始したGXリーグ 注2)における主な活動のひとつである自主的な排出量取引(GX-ETS)の第1フェーズです。この取り組みは全3フェーズで構成されており、第1フェーズでは各企業が国内における直接、間接排出量(スコープ1、2)それぞれについて、2025年度および2030年度の排出削減目標を自ら設定します。企業は排出量実績の算定・報告を行い、自ら設定した削減目標を達成した場合は、目標削減量を超過した分をクレジットとして売却できます。

一方、達成できなかった場合は、超過削減枠や適格カーボン・クレジットを調達するか、または未達理由を説明するものとしています。ただし、排出量取引に利用できるのは国内の直接排出分に限られます。

GX-ETSは第1フェーズが終了する2025年度までは、企業による自主的な取り組みとされており、2026年度から第2フェーズとして排出量取引制度が本格稼働します。第2フェーズでは、排出削減目標の妥当性を民間第三者が認証する仕組みの導入や、目標達成の遵守義務などの規律の強化が検討されています。さらに、2028年度からは炭素に対する賦課金制度の導入が検討されています。これは、化石燃料の輸入事業者などに対して、輸入する化石燃料に由来するCO2の量に応じて、炭素賦課金を徴収するものです。そして、2033年度からは第3フェーズとして、発電事業者に対して、一部有償でCO2の排出枠を割り当てられ、その量に応じた特定事業者負担金が徴収されます。

カーボンクレジット市場の開設は、今年制定されたGX基本方針、GX推進法で提唱されているカーボンプライシング構想の実現に向けた一歩となります。企業は、上述の制度強化のスケジュールを踏まえて、脱炭素に向けた取り組みを進める必要があります。

注)
1)J-クレジット
省エネルギー設備の導入、再生可能エネルギーの利用、森林管理によるCO2の排出削減量や吸収量を、「クレジット」として国が認証する制度。
2)GXリーグ
国内企業がGXを牽引していくために、一体として経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場の創造を目指すプラットフォーム。


参考情報 2023年 10月 11日付 日本取引所グループ HP
「カーボン・クレジット市場の開設と売買開始について」
https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/20231011-01.html

※本記事は、2023年12月1日発行のMS&AD InterRisk Report・ESGトピックス「東証でカーボンクレジット市場が開設、「成長志向型カーボンプライシング構想」の一環」を再編集したものです。

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