レポート

マルチステークホルダーからの評価獲得につながる「伝わる」人的資本開示【RMFOCUS 第90号】

[このレポートを書いたコンサルタント]

金田 匠
会社名
MS&ADインターリスク総研株式会社
所属名
リスクコンサルティング本部 リスクマネジメント第四部
人的資本・健康経営グループ 上席コンサルタント
執筆者名
金田 匠 Takumi Kaneda

2024.7.4

見どころ
ポイント
  • 上場企業に対し有価証券報告書への人的資本情報の開示が義務化されたことにより、開示内容が容易に比較される「人的資本開示競争時代」が到来した。
  • このような中、正しく理解され、有益なフィードバックが得られるような「伝わる」開示をすることがステークホルダーからの高い評価の獲得につながる。
  • 「伝わる」開示ができているかは「目指す姿(To be)と現状(As is)のギャップおよびキーとなる課題について開示できているか」、「将来の目標と現在地を伝えるためのKGI・KPIと施策が整合しているか」、「マルチステークホルダーに伝わる開示ストーリーを作成できているか」の三つのStepにより確認することが有効である。
  • 上記の三つのStepを実践すれば、おのずと独自性のある開示にもつながることとなる。

1. 「人的資本開示競争時代」を勝ち抜くためのキー

⑴「人的資本開示競争時代」に欠かせない観点
2023年3月期より有価証券報告書への人的資本情報開示が義務化された。義務化の影響は上場企業のみならず、規模の大小、上場の有無を問わずすべての企業に及ぶ。なぜならば、開示義務化によって、自社の従業員や求職者が、各企業の人的資本開示を横並びに確認し、「どこで働くか」を選択することが可能になったからだ。人的資本開示の義務化は「投資家からの評価」という観点からのみ語られることが多いが、投資家に加え、従業員、求職者といったマルチステークホルダーからの評価を勝ち取るための「人的資本開示競争時代」がはじまったととらえる方が本質的な理解に近いだろう。「人的資本開示競争時代」において企業は、持続的な企業価値向上を目的として人への投資を行い、その内容を開示することで様々なステークホルダーからの評価を獲得する必要がある。
ここで忘れてはならないのが、「そもそも、どうすればステークホルダーからの評価を得ることができるのか?」という観点である。人的資本可視化指針1)に「経営者、投資家、そして従業員をはじめとするステークホルダー間の相互理解を深めるため、『人的資本の可視化』が不可欠」や「『従業員との対話』、『投資家からのフィードバックを通じた経営戦略・人材戦略の磨き上げ』の一連の循環的な取り組みの一環として可視化に取り組むことが必要」と記載されている。このことから考えると、「人的資本開示競争時代」において勝ち残るために、「自社の人的資本への取組状況や今後の見通しを多様なステークホルダーに開示し、ステークホルダーからの理解・フィードバックを得てブラッシュアップすること」がキーとなる。人的資本に関する情報をステークホルダーに理解してもらうことで、自社の価値を正しく認識してもらうとともに、フィードバックを通して取り組みをレベルアップさせることが肝要だ。

⑵「伝わる」開示のポイントとは
それでは、どのようにすればステークホルダーに正しく理解され、有益なフィードバックが得られるような「伝わる」開示をすることができるだろうか。ステークホルダーにより重視する点は異なるであろうが、おおむね表1のポイントが期待されているものと考えられる。・・・

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