レポート/資料

令和6年の大雨被害と水害への備え ~その2~ 「災害リスク情報(第99号)」

2024.10.4

レポートの
ポイント
  • 令和6年も低気圧や前線の影響で、各地で線状降水帯が発生。
  • 特に令和6年7月25日 からの東北地方日本海側を中心とした大雨や令和6年9月20日からの能登半島の大雨では、多大な被害が生じた。
  • 気象庁による線状降水帯の予測や水害ハザードマップと実際の浸水との比較を整理し、今後の水害への備えについて記載する。

※ここでは、「令和6年の大雨被害と水害への備え~その2~」から、大雨被害への備えについて抜粋してお伝えします。

大雨被害への備え

(1)ハザードマップの確認と避難の検討

まず自治体などが公表するハザードマップを参考に、避難方法を検討する。例えば、国土交通省が公表している「重ねるハザードマップ」では、図1のとおり所在地の災害リスク(河川氾濫による浸水、土砂災害等)を確認することができる。「①所在地を入力」し、「②確認したい災害種別(洪水、土砂災害等)を選択」することで対象拠点周辺のリスクを把握できる。拠点に浸水リスクがある場合、想定されている浸水深により、鉛直避難(建物の二階以上への避難)か水平避難(建物からの立ち退き避難)かを検討し、水平避難が必要な場合は自治体が設置する避難所など最適な避難先・避難経路を選定することをお勧めする。なお土砂災害危険箇所や土砂災害警戒区域に該当する場合は、特に早めの水平避難が望まれる。

【図1】重ねるハザードマップ(国土交通省)における表示例 ※MS&ADインターリスク総研が一部加筆、表示は洪水リスク(想定最大規模の浸水深)

首相官邸では、避難時に役立つ非常用持ち出し袋のチェックリスト(図 2)を公開している。このチェックリストには「子どもがいる家庭の備え」や「高齢者がいる家庭の備え」も掲載されており、これらを参考にして、あらためてご自身の持ち出し品を確認する事をお勧めする。また企業においては最低でも従業員×3日分の備蓄をお勧めする。

【図2】非常用持ち出し袋チェックリスト(首相官邸)※一部抜粋。MS&ADインターリスク総研が一部加筆

避難をするタイミングとしては、図3に示す気象庁等の情報から、対応する警戒レベルに応じた 行動を早め早めに行う事をお勧めする。

【図3】気象警報等が発表された際に命を守るためにとるべき行動の例(気象庁)※MS&ADインターリスク総研が一部加筆

図3の赤枠は河川管理者(国土交通省あるいは都道府県)と気象庁が共同で発表する洪水予報であり、指定河川においてあらかじめ決められた4段階の水位(図4中①)に基づいて情報が発表される。図4に示すのはその概念図であるが、警戒レベル4(紫色:速やかに避難)となる氾濫危険情報が発せられる時点の水位は堤防の高さに差し掛かることからも、その前段階である氾濫警戒情報(赤色)、つまりは警戒レベル3(図4内右側)までの避難が極めて重要である。また、土砂災害や高潮でも同様に警戒レベル3の段階で避難行動を具体化することがより安全である。

【図4】指定河川洪水予報の概念図(気象庁)※MS&ADインターリスク総研が一部加筆

(2)資産の安全対策や事業の停止

対象拠点付近で大雨等による災害が発生する可能性が高いと判断される場合は、企業においては以下の対策を講じられたい。

  1. 窓や扉の閉鎖・施錠
    風雨の室内への吹き込み、備品等の水濡れを防止するため扉や窓・シャッター等を確実に閉止する。
  2. 屋外品の撤収・養生
    風に飛ばされる可能性のあるもの、水に流される可能性のあるものを可能な限り屋内に片付ける。収容が困難なものはブルーシートやロープ等で養生・固定する。
  3. 建物の浸水防止
    建物の出入口や地下入口等に土のうや水のう、止水板を設置して建物内への浸水を防ぐ。
  4. 設備等の保護・電源停止
    高価な機器類や重要書類等は可能な限り事業所内の高所に移動させる。移動が困難なものはビニールシート等で養生する。避難を行う前に、電気機器類は可能な限り電源をOFFにする。できればブレーカーを切ることが望ましい。
  5. 重要取引先への連絡
    営業の縮小、停止が必要な場合は、重要な取引先から順に連絡を入れる。納品の前倒しや延期などを早期に相談する。
  6. 出退社に関する連絡
    従業員については早めの帰宅や出社の見送りを検討する。また、災害発生の可能性が高い状況では無理な帰宅や出社をしないよう呼びかける。従業員の安否を確認するための緊急連絡先の整備も効果的である。

(3)最新情報の収集

「川の防災情報 (”気象”×”水害・土砂災害” 情報マルチモニタ)」は、避難等に必要なリアルタイムな各種情報がまとめられている利便性の高いツールである。事前に降雨地域の状況、気象警報・注意報の発令状況、河川の水位状況等の情報を確認し、大雨が予想される際は、こまめにチェックすることをお勧めする。

【図5】川の防災情報トップ画面(国土交通省)

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