
金融庁、サステナ有報開示でGHGのScope3排出量開示にセーフハーバー・ルール適用へ
2024.12.18
金融庁は2024年10月10日に開いた第4回金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ(WG)」で、有価証券報告書サステナビリティ開示基準(SSBJ基準)の導入に際し、温室効果ガス(GHG)Scope3排出量の開示で記載した事項と実際の結果に差異があった場合でも、虚偽記載として課徴金や刑事罰、民事責任などを課さない「セーフハーバー・ルール」を適用する方針を初めて示した。
方針案では、Scope3排出量の算出に際し第三者からの情報の入手経路の適切性や見積りの合理性について会社内部で適切な検討が行われたことが説明されている場合などを同ルールの適用条件に示した。Scope3では、バリュー・チェーンの上流・下流データプロバイダー、投融資に帰属する排出量(ファイナンスド・エミッション)など、開示企業の統制が及ばない第三者から取得した情報や見積りによる情報の開示が求められることに配慮した措置だ。情報の入手経路や社内の評価プロセスの適切性についても開示することで、企業の責任の範囲を明確化する。今後、WGの結論としてセーフハーバー・ルールを「企業内容等の開示ガイドライン」の改正版に反映する。
WGでは2025年3月のSSBJ基準の確定とその後の導入に向け、開示や保証のあり方を継続的に審議している。セーフハーバー・ルール以外で現時点での主な論点では以下がある。
1.二段階開示の方法
SSBJ基準適用初年度の経過的措置として、①有価証券報告書で主に現行開示基準に基づく1段階目の開示 ②訂正または半期報告書で不足する定量情報等を補完する開示――の二段階の開示を検討。特に、「更新箇所がわかりやすい」や「早期の開示が期待できる」などの理由から、2段階目は訂正報告書が有力。
2.海外に向けた情報開示の方法
欧州の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)など日本以外の基準に基づいて情報開示を行った場合に、日本の投資家に同様の情報をタイムリーに提供すべく、臨時報告書等において開示先のリンクなどの情報を開示する案が議論されている。
3.保証制度の導入
開示内容の保証について、範囲や水準、保証業務の担い手などを幅広く検討。従来の議論を踏まえ、制度開始から一定期間はScope1・2のみを保証対象とするイメージが示されたが、複数の委員が「保証範囲として狭すぎる」や「対象範囲の拡張に関するロードマップを示すべきだ」と指摘。
【参考情報】
2024年10月10日付 金融庁HP
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/sustainability_disclose_wg/shiryou/20241010.html