コラム/トピックス

公益通報者保護法の制度見直しの方向性

2025.2.14

2025年1月、消費者庁・公益通報者保護制度検討会で、公益通報者保護法の改正に向けた議論を踏まえた報告書※1が公表された。消費者庁長官の発言によると、2025年の法改正に向け、消費者庁は近く改正案を国会へ提出する予定。

公益通報者保護法が2020年に改正された後も、その普及や実効性の側面において課題※2があることや国際的にもガバナンスや人権尊重の観点から事業者への制裁措置や通報者保護のさらなる強化が求められている流れを受けて、2024年5月に、本検討会が組成され、全9回にわたって制度見直し等について議論されてきた。

今回、報告書で示された制度見直しの方向性として示された主なものは下表のとおりである。

課題 課題の中での具体例 制度見直しの方向性
1 事業者における体制整備の徹底と実効性の向上 ・従事者指定義務の履行が徹底されていない

・内部通報制度が利用者に認知され、信頼されていない
・誓約書や契約によって、労働者に公益通報をしないことを約束させたり、
公益通報をした場合には不利益な取扱いを行うことを
示唆するなど、公益通報を妨害する
・消費者庁の行政措置権限を強化する

・労働者及び派遣労働者に対する周知が徹底されるよう、
法律で周知義務を明示する
2 公益通報を阻害する要因への対処 ・公益通報がなされた後、事業者内で公益通報者の探索行為が行われる

・誓約書や契約によって、労働者に公益通報をしないことを約束させたり、
公益通報をした場合には不利益な取扱いを行うことを示唆するなど、
公益通報を妨害する
・正当な理由がなく、公益通報者を特定することを目的とする行為を禁止する規程を設ける

・正当な理由なく、公益通報を妨害する行為を禁止するとともに、
これに反する契約締結等の法律行為を無効とする
3 公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済 ・公益通報を理由とする不利益な取扱いをする

・労働者が公益通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受ける
・不利益な取扱いとしてなされた労働者に対する解雇及び懲戒は刑事罰の対象とする

・労働者が解雇無効や懲戒無効を争う訴訟において、
解雇・懲戒事由である「公益通報を理由とすること」の立証責任を事業者に転換する
4 その他の論点 ・保護される公益通報者の範囲にフリーランスが含まれてなく、
不利益な取扱いを受ける懸念がある
・公益通報の主体に事業者と業務委託関係にあるフリーランス及び
業務委託関係が終了して1年以内のフリーランスを追加する

(出典:消費者庁 公益通報者保護制度検討会 公益通報者保護制度検討会 報告書をもとにインターリスク総研作成)

本報告書で示された課題や課題の中で示された例は、公益通報者保護制度よりも通報対象の範囲が広い内部通報制度においても共通するものといえる。法改正に向けた動きを注視し、その対応を進めていくことはもちろんのこと、より実効的な内部通報制度を実現すべく、これらの課題がないか現状評価し、改善していくことが企業には望まれる。

【参考情報】
1)消費者庁 公益通報者保護制度検討会 公益通報者保護制度検討会 報告書
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/meeting_materials/consumer_partnerships_cms205_250109_01.pdf

2)「内部通報制度に関する意識調査-就労者1万人アンケート調査の結果-<全体版>」
どこにも相談・通報しない理由で最も多い回答が「誰に相談・通報したらよいか分からないから」(P.14)、通報したことを後悔している理由で2番目に多い回答が「勤め先から人事異動・評価・待遇面などで不利益な取扱いを受けたから」(P.45)等、通報を躊躇する要因が残っていることが分かっている。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/research/assets/research_240229_0002.pdf

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