
消費者庁「公益通報者保護法の一部を改正する法律案」を国会提出
2025.6.24
消費者庁は2025年3月4日、「公益通報者保護法の一部を改正する法律案」を通常国会に提出した。同改正案が成立した場合、公益通報者への不利益な取り扱いを行ったものに対する刑罰の新設などが見込まれる。2025年5月16日時点で参議院での審議中であり、今国会で成立すれば公布後約1年半後に施行予定。
公益通報者保護法は直近では令和2年に改正が行われ、従業員数300人超の事業者においては従業者等からの内部通報に適切に対応するための体制整備を義務づけた。法改正後、企業の体制整備は進んだものの、通報者への不利益な取り扱いについては引き続き発生していた。また、国連「ビジネスと人権作業部会」から、公益通報者に報復した事業者に罰則を導入するよう勧告を受けるなど、人権尊重の観点からも国際的な要請に応える必要があった。そこで同庁は、公益通報者保護制度の実効性向上を図るため、制度の見直しを目的に検討会を組成、2024年5月から12月にかけて議論を重ねてきた。
改正案の内容は以下の通り。
改正の観点 | 主な改正案の内容 |
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1.事業者が公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性の向上 |
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2.公益通報者の範囲拡大 |
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3.公益通報を阻害する要因への対処 |
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4.公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止・救済の強化 |
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出典:消費者庁「公益通報者保護法の一部を改正する法律案(概要)」
https://www.caa.go.jp/law/bills/assets/consumer_partnerships_cms205_250304_01.pdf
をもとに弊社にて作成
改正案では、法令上求められる体制整備を行なわず、勧告にも従わなかった場合の刑事罰や事業者への立入検査権限に加え、公益通報を理由とした不利益な取扱いをした場合には、行政指導などの段階を経ず、即時に罰則を下すことが規定されるなど、公益通報制度が適切に整備・活用されるための規制が強化されたことが伺える。企業においては、消費者庁が今回の法改正に踏み切った背景や改正の趣旨を理解するとともに、保護対象となる従業員等や内部通報受付窓口にて対応にあたる従事者等に対して同制度について広く周知することで、公益通報窓口の信頼性を向上させることが肝要といえよう。
※ 公益通報者保護法でいうところの従事者とは、内部通報の受付・調査・是正を主体的に行い、通報者を特定させる事項を伝達される者、つまりは内部通報受付窓口の担当者や責任者などのことを指す。従事者は、公益通報者を特定する事項を漏らした場合は、30万円以下の罰金などの刑事罰が科される。公益通報者保護法により事業者は、従事者を指定する義務がある。
【参考情報】
2025年3月4日付 消費者庁HP:https://www.caa.go.jp/law/bills/