コラム/トピックス

TNFD 4業種でセクターガイダンスを追加発表

2025.3.12

2025年1月23日、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は新たに4つの業種別ガイダンス正式版(アパレル・繊維・靴、飲料、建築資材、エンジニアリング・建設・不動産)を公表した。これによりこれまでで合計13業種の正式版が発行されたことになる。合わせてTNFDは3業種(漁業、海運・クルーズライン、水道事業)のガイダンス草案も公表し、パブリックコメントを経た後、6月に正式版を発効する予定とした。

業種別ガイダンスは自然関連課題を評価する際に課題となる可能性のあるバリューチェーンの特性、TNFDのLEAPアプローチへの各セクター特有の取り組み方法、固有の開示指標などについて概説されている。以下では、4つの業種別ガイダンス正式版の概要について説明する。

業種 概要
アパレル・繊維・靴セクター 衣類やハンドバッグ、宝飾品、時計、靴等を取り扱う業種が対象となっており、バリューチェーン全体で自然関連課題(自然への依存・インパクト、リスク・機会)が発生する可能性があるとしている。例えば、当該セクターは天然繊維、皮革、石化原料を使用しているため、バリューチェーン上流の土地改変(森林伐採等)などが主要なインパクトとして挙げられている。また、直接操業では製造・加工過程で染料や化学薬品の使用に関連する汚染等のインパクト、下流では廃棄におけるインパクトについて言及されている。
飲料セクター アルコール飲料(アルコール飲料を醸造、蒸留、製造する業種)と非アルコール飲料(果実等からシロップ、茶葉等からお茶を製造する業種)が対象となっている。例えば、飲料原料として農作物、ペットボトル等の包装材として石化原料を使用しているため、バリューチェーン上流における農地転換、施肥と農薬散布による土壌/水質汚染、石油採掘に伴う土地改変などが主要なインパクトとして挙げられている。また、直接操業では水使用のインパクトが、下流では包装材料の廃棄(マイクロプラスチック等)のインパクトが言及されている。
建設資材セクター 建設事業者または建設資材を生産する事業者が対象となっており、特にセメントや建築骨材(コンクリート等に混ぜる砂等)に焦点を当てている。自然への依存・インパクトは採石場だけに限定されず、砂等の原材料の調達工程やコンクリートの製造工程、建設工程等の下流プロセスについても検討に含めるべきであると言及している。
エンジニアリング・建設・不動産セクター 建設設計業と建設事業者、不動産事業者が対象となっている。当該セクターのバリューチェーンは多岐にわたるため、TNFDは企業が把握しているバリューチェーンから検討を進めることを推奨している。また自然関連課題を検討する上で、不動産の運用の要素(エネルギーの運用等)と建築環境の要素(建築環境性能や環境に配慮した都市構造等)を考慮する必要があることを示している。建築環境は、建物(住宅等)や都市インフラ(民間や公共の建設物)、交通インフラ(道路、鉄道、航空路、水路等)、海洋・沿岸インフラ(風力発電等の洋上インフラ、養殖場や堤防等の沿岸インフラ)に分類されており、各インフラの特徴に合わせて検討が必要である。また、陸域の開発では、既に開発された土地を再開発するのか(ブラウンフィールドの開発)、自然地等の土地転換なのか(グリーンフィールドの開発)なのかを考慮すべきであると言及している。

TNFD開示を検討している企業は、業種別ガイダンスを参照することで自社に期待されている自然関連開示の方向性について具体的に把握することができる。今回、ガイダンスが拡充した業種やそれと共通点がある業種の企業は、ぜひ確認することを推奨する。

【参考情報】
2025年1月23日付 TNFD HP:https://tnfd.global/new-set-of-sector-guidance-published/

会員登録でリスクマネジメントがさらに加速

会員だけが見られるリスクの最新情報や専門家のナレッジが盛りだくさん。
もう一つ上のリスクマネジメントを目指す方の強い味方になります。

  • 関心に合った最新情報がメールで届く!

  • 専門家によるレポートをダウンロードし放題!

  • お気に入りに登録していつでも見返せる。