コラム/トピックス

欧州サステナ開示規制の適用対象・内容を大幅緩和へ、欧州委が法案公表

2025.4.25

欧州委員会は2025年2月26日、サステナビリティに関する開示や人権・環境デューデリジェンスを企業に求める制度の適用対象や内容を大幅に緩和する法案を発表した。対象は、企業持続可能性報告指令(CSRD)や企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)、タクソノミー規則、炭素国境調整メカニズム(CBAM)規則など。EU理事会および欧州議会が今後、同法案を審議するが、最終化のスケジュールは未定だ。

CSRDは適用対象企業の範囲を見直し、すでに適用が始まっているEU企業については、大企業と全上場企業で総資産残高2,500万ユーロ超または純売上高5,000万ユーロ超の基準は維持しつつ、従業員数の基準が500人未満から1,000人未満に引き上げた。一方、域外適用の基準もEU域内の純売上高4億5,000万ユーロに引き上げた。その結果、適用対象の企業数は2割程度に減る見込みだ。加えて、適用が始まっていない企業(その他上場企業など)は、適用開始が28年(27年会計年度分)に延期された。なお、域外企業は、現行通り、29年(28年会計年度分)からの適用になる。

開示を求めるデータの種類も大幅に削減し、セクター別開示項目の策定も見送りが明確になった。

また、適用対象企業が膨大な情報提供を求めるなどサプライヤーの対応負担が過剰になる懸念が出されていたのを受け、従業員1,000人以下の企業から所定の基準(VSME)を超える情報の取得を制限した。

その他、第三者による保証も、将来的に導入予定だった合理的保証への移行は見送り、当面は現行の限定的保証にとどめた。

CSRD CSDDD 今回法案
適用対象企業(EU域内) 大企業(総資産残高2,500万ユーロ超、または純売上高5,000万ユーロ超)とすべての上場企業 従業員1,000人超で、全世界での純売上高4億5,000万ユーロ超の企業 従業員1,000人超の大企業(総資産残高2,500万ユーロ超、または純売上高5,000万ユーロ超)に限定
適用対象企業(EU域外) EU域内での純売上高1億5,000万ユーロ(EU域内支店で純売上高4,000万ユーロ) EU域内での年間純売上4億5,000万ユーロ超 EU域内での純売上高4億5,000万ユーロ(EU域内支店で純売上高5,000万ユーロ)
適用時期(EU域内) ・従業員500人超の大企業:24年以降開始の会計年度
・大企業: 25年以降開始の会計年度
・その他上場企業: 26年以降開始の会計年度
・従業員5,000人超かつ全世界純売上15億ユーロ超の企業: 27年7月
・従業員3,000人超かつ全世界純売上高9億ユーロ超の企業: 28年7月
・従業員1000人超かつ全世界純売上4億5,000万ユーロ超の企業: 29年7月
・従業員1,000人超の大企業:27年以降開始の会計年度
バリューチェーン ・従業員1,000人以下であるバリューチェーン内の企業からの一定の基準を超える情報の取得を制限 ・実施対象:自社、子会社、直接取引先・間接取引先を含むバリューチェーン上のビジネスパートナー
・実施頻度:1年ごと
・実施対象:自社、子会社、ビジネスパートナーは直接取引先に限定。間接取引先については、負の影響に関する信ぴょう性の高い情報がある場合のみ。
・実施頻度:5年ごと
・人権・環境デューデリジェンスのベストプラクティス等を含む実践的なガイドラインを26年7月までに提供
第三者保証 限定的保証
※将来的により保証水準の高い合理的保証へ移行
限定的な保証にとどめ、合理的な保証への移行は見送る

【参考情報】
2025年2月26日付 欧州委員会 HP:https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_25_614

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