コラム/トピックス

LCAを活用した企業価値向上

[このコラムを書いたコンサルタント]

丸山史晃
専門領域
危機管理、BCP、カーボンニュートラル など
役職名
リスクマネジメント第一部 
リスクエンジニアリング第四グループ グループ長
執筆者名
丸山 史晃 Fumiaki Maruyama

2025.5.9

1.LCAとは何か

日本政府が掲げる2050年のカーボンニュートラル実現に向け、国・自治体・企業などが様々な取組を進める中、LCA(ライフサイクルアセスメント)への関心が高まっている。LCAとは、製品・サービスのライフサイクル(原料となる資源の採取や素材製造、部品製造、製品製造、流通、使用、廃棄に至る一連の流れ)から排出される環境負荷が地球や生態系に与える影響を定量的に評価する手法である。LCAが対象とする影響領域としては「地球温暖化」「土地利用」「廃棄物」などがあるが、特に「地球温暖化」についての定量的評価はCFP(カーボンフットプリント)と言われている。

2.LCAを実施する背景

企業がLCAを実施する背景として次のような点が挙げられる。

  • 法令対応(「欧州電池規則」への対応等)
  • 環境性能を定量化することによる自社製品の競争力強化
  • 自社製品の環境負荷(CO2排出量など)低減
  • 消費者へのアピール

LCAではライフサイクルの各段階における環境負荷を個別に算出するため、例えば製造段階で多くのCO2を排出していることが判明した場合、全体の排出量を削減するための改善取組は製造段階の工程であることが明確になる。もちろん、ライフサイクルの各段階全てで削減ができることが望ましいが、排出量の大きい段階を特定し、そこの改善に経営リソースを投じた方が効率的に削減できる。また、改善取組は環境負荷低減だけでなく、作業工程の見直しなどから費用の削減に繋がる可能性もある。

3.LCA実施手順

LCAの実施手順は下表のように、大きく5つの工程が考えられる(製品におけるLCAの場合)。

工程 実施事項(例)
1.目的の設定 ・分析範囲の確定
・製品間の比較要否
2.ライフサイクルフロー図の作成 ・製造工程の確認
・使用エネルギー等の確認
3.データ収集 ・社内外にデータ提供依頼
・算定用に単位を変換
4.計算 ・適切な排出係数の取得
・影響評価の実施
5.算定結果の分析・解釈 ・環境負荷の大きい要素の確認
・算定結果から得られる結論や提言の作成

4.おわりに

LCA実施は非常に困難であり、対応できる要員を社内で育成することは難しい。また、LCA実施は現場の協力が必要であり、平時からのコミュニケーションが無ければ必要なデータが収集できない恐れがあるなど実施に向けた課題は多いと感じるかもしれない。しかし、政府が掲げる2050年カーボンニュートラル実現という大きな流れにおいては、各企業の環境負荷軽減取組は無くなることはなく、むしろ大手企業を中心とした取組は加速することが予想される。その中で自社が生き残るための戦略として早い段階からLCAを実施し、自社の企業価値を高めることが必要である。

(2025年4月24日 三友新聞掲載弊社コラム記事を転載)

会員登録でリスクマネジメントがさらに加速

会員だけが見られるリスクの最新情報や専門家のナレッジが盛りだくさん。
もう一つ上のリスクマネジメントを目指す方の強い味方になります。

  • 関心に合った最新情報がメールで届く!

  • 専門家によるレポートをダウンロードし放題!

  • お気に入りに登録していつでも見返せる。