コラム/トピックス

空飛ぶクルマへの期待と不安

[このコラムを書いたコンサルタント]

増田 藍
専門領域
自動運転、空飛ぶクルマ、
ドローン など次世代モビリティ
役職名
リスクマネジメント第二部 
次世代モビリティグループ 
マネジャー上席コンサルタント
執筆者名
増田 藍 Ai Masuda

2025.6.10

1.空飛ぶクルマへの期待

大阪・関西万博で注目を浴びている空飛ぶクルマは社会に受け入れられるのか。MS&ADインターリスク総研株式会社では、2020年9月(対象1000人)、2021年8月(対象2000人)、2024年2月(対象2000人)の計3回、継続して空飛ぶクルマの社会受容性(認知度・期待・利用場面・実現性)についてウェブ調査を実施している(調査結果の一部は弊社公式サイトで公開)。空飛ぶクルマの認知度については、調査開始2020月9月の64.1%から、2024年2月には71.7%と増加しており、大阪・関西万博などでメディアの露出が増えているためと想像がつく。空飛ぶクルマに対する期待については、2024年2月実施の調査では、「移動時間の短縮(16.3%)」が最も多く、「渋滞のない移動(15.0%)」が続いている。また、どのような場面で利用したいかについては、「遊覧飛行など観光・娯楽の場面(21.7%)」が最も多く、次いで「急いでいる場面(鉄道やタクシーより時間短縮できる場合)(21.6%)」となった。さらに、空飛ぶクルマを利用したいと答えた回答者は53.4%と半数以上となった。これらの結果から、空飛ぶクルマがもたらす利便性への期待が高まっていることが伺える。

2. 空飛ぶクルマへの不安

しかし、空飛ぶクルマの実現性については、2020年9月では57.8%の人が「空飛ぶクルマは実現する」と回答していたが、2021年8月には53.1%、2024年2月には49.3%と、徐々に減少しており、空飛ぶクルマの実現に対して懐疑的な意見の割合が増えている。2018年8月に「空の移動革命に向けた官民協議会」が設立され、同年12月に「空の移動革命に向けたロードマップ」が発表された。この時点では、2023年頃の事業開始が盛り込まれており、近い未来のモビリティに対する期待感が強かったが、2022年のロードマップ改訂では、事業スタートは2024年と修正されており、空飛ぶクルマの社会実装の見込みが先延ばしされているようにも読み取れる。こうしたことが社会の空飛ぶクルマ実現性に対する印象低下につながっている可能性がある。

また、当初大阪・関西万博では、空飛ぶクルマを用いた会場内外での商用運航が計画されていた。しかし、機体開発や認証取得のスケジュールの影響で、2024年9月に商用運航からデモ飛行へ変更が発表された。さらに、万博開幕後の4月26日、デモ飛行中に機体の部品の一部が落下し、安全が確認されるまで、飛行を中止すると発表された。これらの事象は、社会の空飛ぶクルマの安全性に対する認識に影響すると考えられる。特に、自身が空飛ぶクルマに乗る場合、不安に思う項目に関するアンケート(2024年2月)では、「機体の安全性(23.1%)」が最も多く、「トラブル発生時の対策(18.3%)」が次に多い結果となっており、前述した部品落下によるデモ飛行の中止が、一般市民の不安をさらに煽る要因となる可能性がある。

3.おわりに

空飛ぶクルマが日常の交通手段として定着するためには、技術的な進歩だけでなく、社会的な理解と受容が不可欠である。今後、空飛ぶクルマの安全性について正しい理解を促すために、透明性のある情報提供や教育活動が求められる。

(2025年5月29日三友新聞掲載弊社コラム記事を加筆および修正を加えて転載)

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