
モバイルバッテリーなどのリチウムイオン電池搭載製品の規制等に関する最新動向
2025.9.26
最近、リチウムイオン電池を搭載したモバイルバッテリーの火災・発火事故が相次いでいます。
記憶に新しいところでは、8月22日、走行中の東海道新幹線の車内で、乗客が座席前のポケットに入れていたモバイルバッテリーが発火、通報を受けた警備員が消火器で火を消し止めました。また、7月には JR 新宿駅付近を走行中の山手線の車内で、30代の女性が持っていたモバイルバッテリーから出火し、ニュースでも大々的に報じられました。さらに、1月には韓国で旅客機に持ち込まれ、荷物棚に置かれていたモバイルバッテリーから出火し、駐機場で離陸準備中だった機体が半焼する事故も発生しています。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)に 2020年から2024年までの5年間に通知された製品事故情報では、モバイルバッテリーを含む、「リチウムイオン電池搭載製品」の事故は1,860件あり、事故の約85%(1,860件中1,587件)が火災事故に発展しています。中でも、モバイルバッテリーによる火災事故は年々増加傾向にあり、2024年度には、前年度比で約146%となり、発生要因の第1位となっています。※1
図1 リチウムイオンバッテリー搭載製品の製品別事故発生件数


出典:製品評価技術基盤機構「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご用心~「リチウムイオン電池搭載製品」の
火災事故を防ぐ3つのポイント~」(2025年6月26日)3頁より
モバイルバッテリーの事故が増加している主な要因としては次のことが考えられます。
厳しい使用環境 | モバイルバッテリーは常に携帯され使用されることから、落下や衝 撃を受ける場合が多く、また、カバンや車の中に放置されるなど、 過酷な環境で使用されます。また、車や電車、航空機などに持ち込 まれることから、ひとたび発煙や発火に至ると、周囲へ甚大な被害 が及ぶ可能性があります。 |
ネットモール経由による 安価な海外製品の購入 |
ネットモールを経由し、海外製の安価な製品が容易に購入できるよ うになりました。これらの製品は、日本国内で販売するための法規 制に適合していない場合があり、PSE マークが表示されていないなど、 安全性に問題がある製品も多く見られます。 東京消防庁が公開しているデータによると※2、令和5年中に発生した 火災について、出火した製品の入手経路はネット通販が59件 (35.3%)、モバイルバッテリーの入手経路は44件中ネット通販が 13件(29.5%)で最多となっています。 |
このような状況を受け、モバイルバッテリーを含むリチウムイオン電池搭載製品の安全性に関する規制強化が次のとおり、なされています。
電気用品安全法の 技術基準解釈の改正等 (経済産業省・令和4年12月28日施行) |
リチウムイオン電池に関し、これまでの技術基準解釈の別表第9で は、各電池ブロックの電圧監視について明示的に求めていませんで したが、過充電による発火事故を引き起こす懸念があったこと等に 鑑み、技術基準解釈別表第9を国際規格に対応した別表第12の整合 規格に一本化する改正が行われ、各電池ブロックの電圧監視にかか る規定が明示されるようになりました。 |
モバイルバッテリーを安全に使用するためには、製造事業者、輸入事業者、小売事業者および消費者それぞれの努力が不可欠となります。特に事業者においては、法規制への対応はもちろんのこと、安全な製品を調達、製造、提供することで、事故のリスクを最小限に抑える努力が重要となります。
モバイルバッテリーを調達する際には、モバイルバッテリーを構成するリチウムイオン電池単体の構造や特性をよく理解した上で、電池およびバッテリーモジュールの安全機能を搭載した設計がなされていることや、製品の設計プロセスや製造プロセスにおける信頼性の確保や適切な試験が行われていることを確認、検証することが必要となります。
また、万が一不具合が発生した際に、原因解析や迅速な対応が取れる体制が整っているかを確認し、常に連携が取れる状況を構築しておくことが重要です。
1)製品評価技術基盤機構「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご用心~
「リチウムイオン電池搭載製品」の火災事故を防ぐ 3 つのポイント~」2025年6月26日
https://www.nite.go.jp/data/000158238.pdf
2)東京消防庁「リチウムイオン電池搭載製品の出火危険」
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/kasai/lithium_bt.html