
PLレポート「食品安全(2025年10月号)」
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2025.10.1
食品衛生や食品安全に関する最近の主要動向を国内トピックスとして紹介する「PLレポート(食品)」では、2025年10月号で以下のようなトピックを取り上げています。
- 大手コンビニエンスストア、店内調理品の期限表示不備について再発防止策を公表 ~期限表示管理の基本を振り返る~
- フランス産のナチュラルチーズ、リステリア検出により自主回収 ~チーズ回収から考える食品安全~
- 解説コーナー:食品安全の視点で見る加工食品の海外輸出のリスク対策
第2回 国内外の事故事例とリスク情報の調査・活用
ここでは以上のトピックの中から、「大手コンビニエンスストア、店内調理品の期限表示不備について再発防止策を公表 ~期限表示管理の基本を振り返る~ 」についてのトピックの一部をご紹介します。
大手コンビニエンスストア、店内調理品の期限表示不備について再発防止策を公表 ~期限表示管理の基本を振り返る~
2025年8月、大手コンビニエンスストアで、店内調理のおにぎりや惣菜において消費期限を意図的に延長する不正が発覚した。9月には店舗全店の調査結果の報告と再発防止策が公表された ※1。
具体的には、製造・販売・廃棄に係るデータ照合の定期化、社長直轄の品質管理専任担当者の配置、製造計画に合わせて稼働するラベル発行機の導入や厨房内カメラの新設、相談窓口の新設、全従業員への再教育、第三者機関による調査の評価基準の厳格化が挙げられている。
フードロス削減や廃棄率の低減は、食品事業者にとって避けられないテーマであるが、意図的な期限の改ざんは、食品安全リスクを増大させるだけでなく、企業の信頼を損なう行為である。
今回は、店内調理において適切な期限表示管理を行うために、現場での基本管理と不正防止の対策例を、工程ごとに整理した。
1. 期限表示の正確さを守る基本管理:製造~ラベル貼付
(1)製造・調理
- 期限の基準がブレないよう、製造日や製造開始時間・終了日を明確に記録する。
- 原材料の期限切れや表示不備は完成品の期限不備につながるため、原材料の入庫や仕込みの 段階で期限管理を徹底する。
- 記入漏れや誤記入を防ぐため、作業者が記入、確認するタイミングを標準化する。
- 事故、トラブル発生時にトレースできるよう、製造時に異常が起きた場合は記録を残す。
(2)期限設定
- 作業者による判断のばらつきを防ぐため、期限設定ルールを明文化する。
- 作業員が単独で期限を変更できない体制にする。
- 不正やミスを防ぐため、規定外の運用(例:在庫調整のための延長等)は禁止する。
- 期限の一貫性を保つため、商品規格書に基づき、消費期限・賞味期限を確認する。
(3)印字・ラベル作成
- 誤表示を防ぐため、印字内容を現場で必ず確認し、必要に応じて印字担当者と別の作業者が ダブルチェックを行う。
- 誤貼付を防ぐため、発行されたラベルの枚数と製造数が一致しているかを確認し、余剰ラベ ルを残さない。廃棄ラベルは必ず回収し処理するなど、再利用できないように管理する。
(4)貼付・表示
- 誤貼付や不正差し替えを防ぐため、ラベルは作成直後に貼付する。
- 貼り忘れを防ぐため、手作業の場合は「貼付済」と「未貼付」の商品が分かるようにトレイなどに分けて入れ、混入を防止する。
2. 販売後管理と不正抑止:陳列~監査
(1)販売・陳列、廃棄
- 陳列前に期限が正しく表示されているか再確認する。
- 現場での判断を明確にするため、陳列商品の販売期限や撤去時刻を管理する。
- 期限切れ品の販売を防ぐため、定期的に陳列棚を再確認する。
- 値引きを行う場合は値引きシールを明確にし、通常品や期限切れ品との混在を避ける。
- 不正差し替えや隠ぺいを防ぐため、廃棄の記録を残し、販売データと突合する。 突合の結果、急に廃棄が減るなど不自然な差があった店舗は、重点監査対象とする。
(2)内部通報・監査
- 違反行為を早期に発見するため、匿名で通報できる外部窓口を明示し、現場で声を上げやすくする。通報があった場合の調査手順も明確化し、報復防止を徹底する。
- 記録類だけでは見えない問題を把握するため、定期的に抜き打ち検査を行う。
- 内部監査以外にも、第三者機関を利用して監査を行う。
(3)機器や資材による対策
- ラベル発行機は日付変更履歴を記録できるものを使用。
- 印字機やラベル発行ソフトに制御機能を追加、改ざんできないようロックする。
- 剥がれにくいラベル、貼り替え防止のために破損防止仕様のラベルを使う。
- 調理場やバックヤードに監視カメラを設置する。
(4)衛生管理教育の実施
- 目的と方針の明確化:衛生管理教育は「消費者の安全確保」と「不正行為の未然防止」を両輪とすることを明確に伝える。
- 対象別・役割別の教育設計:現場作業者と管理者それぞれの業務に直結する教育を行う。
- 座学にケーススタディ等を取り入れ、理解度と納得感が高まるよう工夫する。
機器やシステムは万能ではなく、運用次第で効果が左右される。そのため、まずは運用ルールを 明文化し、従業員に周知徹底させることが重要である。さらに、製造・印字・廃棄などの記録を正確 に作成・保管し、必要に応じて突合できる体制を整え、印字・貼付・期限変更などの工程ではダブル チェックや権限分離を徹底することが基本である。このような基本的な管理は、人的ミスや不正を 根本的に防ぐ土台となる。また、教育や定期監査を通じて、これらの管理を日常業務に定着させて いくことも必要となる。
【参考情報】
1)「店内加工おにぎり等の消費期限の表示に関する不正の調査結果と今後の取り組みについて」https://www.ministop.co.jp/corporate/notice/assets/pdf/293b9f06ff52283f76d323a4b5b56dc6.pdf
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