レポート/資料

バンコクSamsen通りにおける大規模陥没事故 【InterRisk Asia Report 2025 No.04】

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[このレポートを書いたコンサルタント]

会社名
InterRisk Asia (Thailand) Co., Ltd.
役職名
Assistant Manager
執筆者名
堤 明正 Akimasa Tsutsumi

2025.11.4

要旨
  • 2025年9月24日午前、Vajira病院の前にあるSamsen大通りで地盤が沈下し、大規模な道路陥没事故が発生しました。
  • 地下鉄トンネルの脆弱な構造により発生した漏水および土砂流出が陥没事故の原因と推測されますが、詳細な原因は調査中です。
  • 負傷者は報告されておらず、発生した損害は道路および警察署基礎杭の損傷のみでした。
  • バンコクは地盤沈下リスクが高い地質特性であり、他地域でも陥没リスクにつき注意が必要です。

何が起こったのか?

2025年9月24日午前 7時13分にSamsen道路が陥没し、Vajira病院前からSamsen警察署までの区間に、縦30メートル、横30メートル、深さ50メートルの大きな空洞が発生しました。この場所は、地下鉄(Mass Rapid Transit, MRT)パープルライン延伸計画におけるVajira病院駅の予定地でした。2本の電柱と2台の車が空洞に落ちるなどの被害が発生しました。

道路の地盤沈下
道路の地盤沈下

道路の地盤沈下 (出所: Facebook: Office of Disaster Prevention and Mitigation)

初期の陥没後も地盤沈下が進行したため、Vajira病院前の道路が崩壊し続け、同日午後1時5分に橋脚および電柱などが陥没孔に落下しました。事故現場付近の降雨の影響もあり、その後も状況は拡大し、午後1時25分にDusit警察署の建物が小規模に崩壊しました。午後2時42分および午後3時15分の沈下量は、それぞれ1メートルおよび2メートルでした。

MRTパープルライン延伸計画
MRTパープルライン延伸計画

MRTパープルライン延伸計画(出所: Mass Rapid Transit Authority of Thailand (MRTA))

事故対応

Vajira病院は、外来部門および医学部の実習を2日間停止しました。Dipangkorn Rasmijotiビルも一時的に閉鎖されましたが、Bejaratanaビルにある緊急治療室 (ER) の機能は維持され、必要な手術の実施は認められていました。なお、病院の建物は地下の基礎壁のため被害は受けませんでしたが、安全確保のために約3,500人の患者は事故現場付近の建物から避難するよう、当局からの指示がありました。

Samsen警察署は周辺の建物の中で最も大きな被害を受けました。一部の基礎杭が損傷したため、警察署を一時的に移転せざるを得ませんでした。また、道路陥没による2次災害を防ぐために、Dusit地区当局によってVajira交差点からSanghi交差点までとその周辺地域を通行止めにする措置が取られました。

バンコク都知事のChadchart氏は、被害を最小限に抑えるための7つの緊急対策を発表しました。

  1. 水道配水を遮断し、緊急時には地域の住民に二次的な水道管を確保する
  2. 2次災害防止のために送電を停止する
  3. トンネル内の漏水箇所および土砂流出箇所の補修
  4. 事故現場周辺の建物の安全性評価
  5. CCTVカメラによる地盤の状態監視
  6. 建物構造の検査
  7. 周辺の交通管理

調査

Chadchart都知事は、水道からの漏水、ならびに地下鉄トンネル (深さ15~20メートル) および地下鉄駅の弱い場所である接続部への土砂流入によって地盤沈下が始まった旨の見解を発表しました。一部の周辺住民によると、地盤沈下に先立って道路から水がしみ出していました。現在、さらなる根本原因の調査が実施されています。

事故シミュレーション
事故シミュレーション

事故シミュレーション (参考: Render Thailand)

タイ王国政府のAnutin首相は、「原因はまだ特定できていない。何らかの技術的過誤があったと考えられる。原因究明に努める。」と述べました。

Chadchartバンコク都知事は、降雨により多くの土砂や水がトンネルに流入することにより道路の復旧工事が遅れる可能性があることが懸念されるため、降雨時に対応する専門チームの準備を備えていると表明しました。

タイ大量高速輸送公社 (Mass Rapid Transit Authority of Thailand:MRTA) のKajpajon Udomthamphakdee総裁は、「土壌の隆起と地下水の漏出が、地下鉄駅の壁とトンネルの周りの地盤の動きを結びつけている」と述べました。

Pichit鉱物資源局長は、今回の事故を鉱物資源の観点から…

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