PLレポート 製品安全(2025年12月)
2025.12.1
- PLレポートは四半期に1回、製品安全、PLリスクに関連するニュースや昨今の技術革新や市場の変化等を踏まえた製品安全に関わる旬のトピックスを連載します。
国内のトピックス
○ 経済産業省がPSアワード2025の受賞企業を発表
※PSとは…Product Safetyの略。
経済産業省は2025年11月27日、「令和7年度製品安全対策優良企業表彰(PSアワード2025)」の組織部門における受賞企業を発表しました。
本表彰は、経済産業省が製品安全に積極的に取り組んでいる企業から広く公募し、製品安全の先進的な取組を讃えることで、事業活動や消費生活において製品安全が重要な価値として定着し、社会全体で製品の安全が守られることを目的として毎年行っている制度で、今年で19回を迎えます。
本表彰では、各企業が扱う製品自体の安全性を評価するのではなく、企業・団体全体の製品安全活動に関する取組について評価します。
今年度の受賞企業7社は、以下のとおりです。
- 経済産業大臣賞
【中小企業 製造事業者・輸入事業者部門】
株式会社いうら
【中小企業 小売販売事業者部門】
株式会社カイノ電器 - 技術総括・保安審議官賞
【大企業 製造事業者・輸入事業者部門】
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 - 優良賞(審査委員会賞)
【大企業 製造事業者・輸入事業者部門】
株式会社ノーリツ
象印マホービン株式会社
【大企業 小売販売事業者部門】
株式会社大創産業 - 特別賞
【特別賞 企業総合部門】
ヤマト運輸株式会社
経済産業省のニュースリリースでは各社の受賞理由が掲載されています。また、表彰制度のホームページではこれまでの受賞企業と受賞理由が公開されており、製品安全実現のための課題への取組や、これらを実現してきた過程が示されています。自社の取組との比較検証、製品安全管理態勢の見直し・強化等に参考になるものといえます。
【参考情報】
経済産業省 ニュースリリース
https://www.meti.go.jp/press/2025/11/20251127002/20251127002.html
経済産業省 製品安全対策優良企業表彰(PSアワード)ホームページ
https://www.meti.go.jp/product_safety/ps-award/
○ 経済産業省が「+あんしん」の受賞製品を発表
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経済産業省は2025年11月27日、「令和7年度製品安全対策優良企業表彰(PSアワード2025)」の製品部門(+あんしん)における受賞製品を発表しました。
「+あんしん」は、PSアワードの一環として今年度より新設されたものです。
高齢者やこどもなどによる誤使用や事故の未然防止に積極的に取り組んでいる企業から広く公募し、製品全体に対する本質的な安全性に「プラス」して、特定の誤使用等による事故を防ぐために対処・配慮した製品を対象に、特別なマークを表示し、消費者が安全な製品を選択できるようにサポートする制度です。受賞製品には、「+あんしん」ロゴが表示され、消費者に誤使用などによる事故の未然防止に役立つ機能を持つ製品であることが一目でわかる表示が行われます。


図「+あんしん」ロゴ
今年度、第1回の受賞製品は、以下の6製品で、同省のニュースリリースでは各製品の受賞理由などが掲載されています。
| 受賞商品 | 企業名 | 評価された主なリスク低減方策 |
|---|---|---|
| USBケーブル | エレコム株式会社 | コネクターの温度ブレーカーで、発熱を検知した 際に通電を遮断し、発熱のリスクを低減 |
| 蒸気レス 電気ケトル |
タイガー魔法瓶 株式会社 |
ふた内部に蒸気を水に変換する冷却通路を設け、 外部に蒸気を排出せずやけどのリスクを低減 |
| 遮断機式手すり | マツ六株式会社 | 手すりが自重で落下することを防ぐ衝動ストップ 機能(スイベルヒンジ)で、うっかり手を離した 場合に怪我を負うリスクを低減 |
| グリル付き ビルトインこんろ |
リンナイ株式会社 | 大型ごとく化、周辺部品の黒色化、音声お知らせ 機能で着衣着火のリスクを低減 |
| ガスこんろ | 株式会社パロマ | バーナーの後方設置、着衣やモノの侵入を検知す るエリアセンサーで着衣着火のリスクを低減 |
| IHクッキング ヒーター |
日立グローバルライ フソリューションズ 株式会社 |
2層の遮熱層と冷却層を設けた3層構造とし、遮 熱層でグリル庫内の熱を遮断しながら、冷却層に 空気の流れをつくり、自然対流で暖められた空気 を排出することで、表面の温度上昇を抑制する 「温度低減ドア」でやけどのリスクを低減 |
事業者においては、「+あんしん」の受賞で、自社の製品が実現している誤使用・不注意による製品事故の未然防止対策を広く消費者に認知される機会となりえます。製品安全の取組について消費者へのアピールする機会として本制度を活用していくことは検討に値するでしょう。
【参考情報】
経済産業省ニュースリリース
https://www.meti.go.jp/press/2025/11/20251127002/20251127002.html
経済産業省製品安全対策優良企業表彰(PSアワード)+あんしんホームページ
https://www.meti.go.jp/product_safety/ps-award/risksystem/
○ 製品事故発生時の対応のポイント
相次ぐモバイルバッテリーの発煙・発火が大きなニュースとなり、ある事業者においては、対象台数が50万台規模となるリコールが行われています。消費生活用製品において、製品事故が発生した場合、企業のとるべき対応やその際の留意点は何なのか、今回のPLレポートではこれらを整理していきます。
1.製品事故発生時の対応
製品事故発生時において、対応すべきことは、大きく分けると以下の3つです。
- 被害者対応
- 製品事故報告
- リコール実施是非の判断
(1)被害者対応
製品事故が発生し、人身被害や財産への拡大損害が発生している場合には、当該被害者に対してしかるべき謝罪対応が必要になります。自社製品起因はもちろんのことですが、自社製品起因であることが明らかではないとしても、社会的責任の観点で、被害者への対応が期待されます。当該時点では事実が確定していない状況であることがほとんどですが、法的責任を意識するあまりに被害者対応が遅れることは避けなくてはいけません。迅速な対応が以後の各種対応において円満な解決にもつながる可能性が高まります。
(2)製品事故報告
製品事故とは「消費生活用製品の使用に伴い生じた事故のうち、一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生した事故消費生活用製品が滅失し、又はき損した事故であって、一般消費者の生命又は身体に対する危害が発生するおそれのあるもののいずれかに該当するものであって、消費生活用製品の欠陥によって生じたものでないことが明らかな事故以外のもの(他の法律の規定によって危害の発生及び拡大を防止することができると認められる事故として政令で定めるものを除く。)」と規定されています。
当該製品の欠陥によって生じたものでないことが明らかでない限り、製品事故に該当します。当該製品に起因した事故か、そうでない事故かは、事実関係や原因が明らかになって初めて分かるところではありますが、ここでの対応上のポイントは、疑わしきは製品事故、ということです。
製品事故のうち、次の事象が発生している場合は、重大製品事故として製造事業者または輸入事業者は当該事故を知った時から10日以内に消費者庁に報告する義務があります(消安法第35条第1項及び第2項、施行規則第3条)。
- 死亡事故
- 重傷病事故(治療に要する期間が30日以上の負傷・疾病)
- 後遺障害事故
- 一酸化炭素中毒事故
- 火災(消防が確認したもの)
本制度の趣旨は、関係機関への迅速な報告により、製品事故の拡大防止を図ることにあります。この制度趣旨に鑑みた対応が企業には期待されます。
(3)リコール実施是非の判断
発生した製品事故について、危害の程度と多発可能性を勘案した定量的評価と当該事案が与える当該企業及びステークホルダーへの影響の定性的評価を総合考慮し、リコール実施の是非を判断します。定量的評価においてはR-Mapをはじめとしたリスクマップを活用して評価を行う方法や、危害の大きさ別にリコール実施を判断する発生件数を予め決めておいて、その指標にあてはめて検討する方法などがあります。
リコール実施が決定したのちは、リコール開始時点の決定と実施計画を策定していくことになります。一方、リコール実施の決定に至らない判断をしても、それはあくまでもリコール実施の判断を保留した状態に過ぎず、今後の状況を注視していく体制といかなる事象をリコール実施判断のトリガーにするか決めておくとよいでしょう。
2.事実確認・事案評価の重要性
上記(1)~(3)の対応を実現するためには、当該製品事故に係る事実確認と事案評価を適切に行うことです。
事実確認の際には、開発・設計から出荷までの各種情報、上市後の製品事故に至らなかった情報などを収集し、当該事案の全体を捕捉することが肝要です。この際、ワーストシナリオベースで確認すべき情報は、網を広げて収集しておくとよいです。また、全体像の捕捉が速やかであればあるほど、当該事案の原因の推定や問題となっている製品の対象ロットの絞り込みも速やかに実施でき、(1)~(3)の各対応のスピードアップを図ることができます。
また、事案評価においては、過去の経験などに依拠したり、憶測や思い込みで評価することを排除していくことが重要であり、社外の有識者などの第三者の視点を確保している例もあります。
以上のとおり、製品事故が発生した場合の企業のとるべき対応とその際の留意点を説明してきました。これらを実現するためにも、関連する仕組み・ルール及び付随するツール類の整備とそれらが機能できるように関係者に対する教育・訓練が必要になります。製品安全実現に向けて、企業は各種努力をしていますが、製品事故をゼロにすることは困難です。製品事故が発生することを前提に、自社も含めたすべてのステークホルダーの損失の最小化に向けて、十分に準備をしておくことが企業には求められています。
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