コラム/トピックス

GPIFがインパクト投資の報告書を公表 国内では急拡大、欧米機関投資家は戦略の可視化を志向

2026.7.30

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2026年6月15日、「インパクト投資に関する調査研究」を公表した。

報告書は、インパクト投資について「金融的リターンを得ながら、測定可能な社会的・環境的インパクトを生み出すことを意図する投資」と定義。インパクト投資の概念や市場や業界団体の動向、各国の政策・規制、インパクトファンド、海外年金基金の取り組みを整理している。あわせて、現状について、日本国内のインパクト投資が急速に拡大する一方、その成果をどのように生み出し、測定し、投資判断につなげるかという実装上の課題を指摘している。

インパクト投資は、環境・社会・ガバナンスなどを幅広く投資判断に取り込む「サステナブル投資」の一角。全体の中では、なお限られた規模にとどまるものの、インパクト投資は、金融的リターンと並行して測定可能な社会的・環境的効果の創出を明確に意図する投資として、存在感を急速に高めている。

報告書は、各種統計などから、国内の投資残高を、2024年度で17兆3,016億円と試算。前年比では約1.5倍増、2020年度(5,126億円)からの4年間では約34倍に拡大した格好だ。

国内市場の構成をみると、資産クラス別では融資と債券が投資残高の8割以上を占める。融資には、ポジティブ・インパクト・ファイナンスやサステナビリティ・リンク・ローンなどが含まれ、日本では銀行を中心とする間接金融が市場拡大をけん引していると読み取れる。

<表1 国内インパクト投資の資産クラス別の割合>

国内インパクト投資の資産クラス別の割合
国内インパクト投資の資産クラス別の割合

出典:GPIF「インパクト投資に関する調査研究」報告書

<表2 国内インパクト投資のプレーヤー別の割合>

国内インパクト投資のプレーヤー別の割合
国内インパクト投資のプレーヤー別の割合

出典:GPIF「インパクト投資に関する調査研究」報告書

投資領域では、2024年度で投資残高の60%を気候変動の緩和関連が占めた。

<表3 国内インパクト投資の領域割合の推移>

国内インパクト投資の領域割合の推移
国内インパクト投資の領域割合の推移

出典:GPIF「インパクト投資に関する調査研究」報告書

一方、報告書は、インパクト投資で金融的リターンを得ながら測定可能な社会的・環境的インパクトを生み出すための要点を提示。具体的には、インパクト目標に至る経路を示す「セオリー・オブ・チェンジ」の策定や指標と目標の設定、投資先のモニタリング、結果の報告、過去のデータやそれによる学びの次の投資への活用などを挙げる。資金を特定分野に配分するだけでなく、投資が実社会の変化にどのようにつながったかを継続的に管理することが重要としている。

また、報告書は、世界の主要な年金基金10機関について、開示内容の精査や投資責任者などにインタビューした結果を掲載。それによると、半数がインパクト投資を銘打って推進していた。そのうち1機関は気候(CO2削減)や社会(社会的弱者向けの住宅増加など)などの数値目標を設定済。他の1機関も設定予定だった。ほかには、インパクトの創出に向けた戦略を「セオリーオブチェンジ」で表現した英国グレーター・マンチェスター州職員退職年金基金(GMPF)の例を紹介。同基金は、自身の投資活動が、「雇用や住居、健康、インフラの改善を通じた地域住民の生活向上」や「地域住民間の不平等の軽減」などの地域社会へのインパクトにつながる経路を、アウトプットやアウトカムの階層で体系化している。

ほかには、受託者責任の観点から、インパクト投資であることを理由にリスク・リターンで妥協しないとの意見がおおむね共有されていると総括した。一方で、インパクトファンドの投資リターンに関する実証研究は少なく、「一般的な投資に比べてリターンが下回る」と「市場と比べて遜色がないとする」の双方の主張が存在すると付け加えた。

この報告書を通じて、日本国内のインパクト投資が量的な拡大を遂げている一方で、欧州などの大手機関投資家では、投資による貢献と成果をどのように説明し、再現可能な投資プロセスとして確立するかを志向する姿が伺える。

【参考情報】
2026年6月15日付 GPIF HP
https://www.gpif.go.jp/investment/research/commission/

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