コラム/トピックス

死後に残るメール、写真、SNS投稿――デジタル遺品の“思い出の品”をどう扱ってほしいですか?

[このコラムを書いた研究員]

新納 康介
専門領域
食料安全保障、マイクロファイナンス
役職名
主席研究員
執筆者名
新納 康介 Kousuke Niiro

2026.10.1

MS&ADインターリスク総研は、保有するデジタルデータやオンラインアカウントの死後の取り扱いに対するユーザーの意識および対策の実態を把握すべく、2026年5月に、SNS、サブスクリプション、金融のオンラインアカウントを保有するデジタルサービス利用者500人を対象にアンケート調査を実施しました。

本調査の報告書であるリサーチレター「デジタル遺品に関する意識と対策の実態」 では、回答者のうち、家族が残したデジタル遺品の整理をしたことがあると回答した77人(15.4%)が、デジタル終活への意識が相対的に高く、生前整理も進んでいたことが指摘されています。

本稿では、回答者自身が亡くなった後のデジタル遺品のうち、メール、写真、SNS投稿などの“思い出の品”をどう扱ってほしいかの意向について、デジタル遺品の整理経験者と未経験者の違いを紹介します。

この記事の
流れ
  • デジタル遺品における“思い出の品”
  • デジタル遺品の整理の経験~3割超が「円滑に進んだとは思わない」
  • 遺品整理の経験によって違う?“思い出の品”をどう扱ってほしいか
  • デジタル遺品の整理を経験することで生まれる視点
  • まとめ

デジタル遺品における“思い出の品”

デジタル遺品と聞くと、金銭的価値を持つネット口座などを思い浮かべる人も多いかもしれません。明確な定義はありませんが、実は、デジタル遺品にはそうした金銭的価値を持つものに加えて、個人がデジタルデバイス上やWEB上に残したデジタルデータのうち、次のような“思い出の品”も含まれます。

  • コミュニケーション履歴: メール、LINE、SNS(Facebook、X、Instagram)のメッセージや投稿
  • クラウドストレージ: Google Drive、iCloud、Dropboxなどに保存された写真、動画、文書
  • PC・スマートフォン内のデータ: デバイス本体に保存されている各種データ

これらを、持ち主の死後、遺族などに、持ち主の意向通りに扱ってもらうために、“思い出の品”へのアクセス方法とその処理についてまとめておく、いわゆるデジタル終活が国民生活センターなどより勧奨されています。

デジタル遺品の整理の経験~3割超が「円滑に進んだとは思わない」

本調査では、家族のデジタル遺品の整理をした経験があるかについて聞いています。経験が「ある」とした回答者は15.4%(77人)でした(図表1)。また、デジタル遺品の整理の経験がある77人にその整理が円滑に進んだかどうかについて聞きました。その結果、「そう思わない」と「全くそう思わない」の回答の合計は33.8%になりました。つまり3人に1人が、家族のデジタル遺品の整理が大変だったことを示しています。

【図表1】あなたは、過去にご家族が残したデジタル遺品の整理を行ったことがありますか(n=500)

あなたは、過去にご家族が残したデジタル遺品の整理を行ったことがありますか
あなたは、過去にご家族が残したデジタル遺品の整理を行ったことがありますか

【図表2】ご家族が残したデジタル遺品の整理は円滑に進みましたか(n=77)

ご家族が残したデジタル遺品の整理は円滑に進みましたか
ご家族が残したデジタル遺品の整理は円滑に進みましたか

遺品整理の経験によって違う?“思い出の品”をどう扱ってほしいか

本調査では、回答者全員に“思い出の品”をどのように扱ってほしいかを聞いています。本稿ではそれをデジタル遺品の整理経験別に比較しました。その結果、メールやLINEのメッセージ、SNSへ投稿されたデータ、PC、スマートフォンや、クラウドストレージにあるデータの3つの設問においてデジタル遺品の整理経験がない回答者の6割~7割弱が「完全に削除してほしい」としました。また、デジタル遺品の整理経験のある回答者3割~4割弱が「そのまま残してほしい」とし、デジタル遺品の整理経験のない回答者の2割~3割弱は“思い出の品”をどのように扱ってほしいか「わからない」ということも明らかになりました(図表3、4、5)。

【図表3】ご自身のメール、LINE、のメッセージなどは、あなたが亡くなった後、どうしてほしいですか

ご自身のメール、LINE、のメッセージなどは、あなたが亡くなった後、どうしてほしいですか
ご自身のメール、LINE、のメッセージなどは、あなたが亡くなった後、どうしてほしいですか

【図表4】ご自身のSNS(X、Facebook、Instagramなど)へ投稿されたデータは、あなたが亡くなった後、どうしてほしいですか

ご自身のSNS(X、Facebook、Instagramなど)へ投稿されたデータは、あなたが亡くなった後、どうしてほしいですか
ご自身のSNS(X、Facebook、Instagramなど)へ投稿されたデータは、あなたが亡くなった後、どうしてほしいですか

【図表5】ご自身のPC、スマートフォンや、クラウドストレージにあるデータは、あなたが亡くなった後、どうしてほしいですか

ご自身のPC、スマートフォンや、クラウドストレージにあるデータは、あなたが亡くなった後、どうしてほしいですか
ご自身のPC、スマートフォンや、クラウドストレージにあるデータは、あなたが亡くなった後、どうしてほしいですか

デジタル遺品の整理を経験することで生まれる視点

このように、デジタル遺品整理の経験者は、“思い出の品”の扱いについて明確な考えを持ち、“思い出の品”を残す選択肢も現実的に考える傾向が見られました。これは興味深い点です。本人の意向を尊重すべきではありますが、実は、“思い出の品”を完全に削除することは、良いことばかりではありません。

例えば、“思い出の品”の中には、遺族にとって必要な情報があるかもしれません。大事な連絡先、契約情報、重要なやり取りなどが完全に削除されてしまうと、遺産相続の手続きに困難が生じる可能性があります。

また、“思い出の品”は遺族、友人にとってもかけがえのないデータであるかもしれません。家族や友人とのやり取り、一緒に写っている画像や動画データが完全に削除されてしまうと、故人の生きた証だけではなく、家族や友人にとっての大事な思い出も消失してしまいます。そして、それらは多くのデータの中に埋もれていていつなんどき役に立つかわかりません。

まとめ

デジタル遺品における“思い出の品”には、単なるデータではなく、家族や友人にとって大切な記録や思い出が含まれている可能性があります。調査結果からは、整理経験のある人ほど「残したい」「どう扱ってほしいか」を具体的に考えている一方、未経験者には迷いも多いことがわかりました。

だからこそ、日頃から「残したいもの」「消したいもの」「見てほしいもの」を自分なりに考え、アクセス方法とあわせて整理し、共有しておくことが大切です。デジタル終活は、遺された人の負担を減らすだけでなく、自分の思いをきちんと伝えるための準備でもあります。

【参考文献】

  • 独立行政法人国民生活センター(2024)『今から考えておきたい「デジタル終活」-スマホの中の“見えない契約”で遺された家族が困らないために-』
  • 萩原栄幸(2015)『「デジタル遺品」が危ない』ポプラ社
  • 古田雄介(2020)『スマホの中身も「遺品」です』中央公論新社
  • LIFULL senior(2026)『故人とのデジタル遺品に関する会話、9割が「不十分」|約半数が生前に「特に備えていなかった」と回答』
  •  
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デジタル遺品に関する意識と対策の実態~アンケート調査結果より(2026年版)
【リサーチレター(2026年7月)】
https://rm-navi.com/search/item/2563

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