コラム/トピックス

コーポレートガバナンス・コードが5年ぶりに改訂、成長投資促す変更のポイント

2026.8.31

金融庁と東京証券取引所は2026年7月21日、企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)改訂版を公表した。今回の改訂では、補充原則の再整理や解釈指針の新設など全体の構成を見直したほか、株主の権利行使に係る環境整備の一環として、有価証券報告書を株主総会前に提出することを原則に追加した。改訂は5年ぶり3度目。

今回の改訂は、形式的な対応ではなく、企業・投資家双方によるガバナンス改革の実質化が重要との認識を踏まえたものと説明。対応コストや開示負担の軽減のみでなく、各原則への実質的な対応を促す狙いだ。全体構成では「プリンシプル化・スリム化」を図り、改定前の「補充原則」の記載事項のうち中核的な事項を「原則」に移行する一方で、本文と「解釈指針」の役割分担を明確化した。結果的に、改訂前は83項目あった「原則」が30項目に減った。

主な改定内容では、原則1-2で有価証券報告書の株主総会前の提出を原則に記載し、解釈指針で株主総会開催日の3週間以上前に提出されることが最も望ましいことや、そのために株主総会開催日の後ろ倒しも選択肢となり得ることを記載した。

このほか、取締役会の役割・責務を、基本原則4で「企業戦略等の大きな方向性付け」「経営陣による適切なリスクテイクを支える環境整備」「独立した客観的立場から経営陣を監督」の3つを挙げ、改定前の内容を基本的に維持。あわせて、原則4-1で成長の道筋の構築を強調し、今回の改訂の主眼である「成長投資の促進」を反映した。このほか、経営最高責任者(CEO)の選解任や指名・報酬委員会、株主との建設的な対話における経営陣の役割なども解釈指針で具体化した。

サステナビリティを巡る取り組みを、「取締役会の役割・責務」として原則4-5に独立させた。積極的・能動的に取り組むべき課題として、基本的方針の策定と適切な対応を明記した。また、解釈指針ではSSBJ基準などの開示制度の動向に言及したほか、気候変動や人権、従業員の健康・労働環境への配慮や多様性などの課題を、リスク・機会双方の観点で適切な対応を求めた。加えて、原則2-2「社内の多様性の確保」では、改訂前の女性に限定した記載から、ジェンダーや国際性、年齢、文化的背景などを加えた多様な人材の登用を求める内容に変わった。

【表】主な改訂項目一覧
項目 改訂概要 改訂区分
コード全体の構成 「プリンシプル化・スリム化」を明記。中核事項を原則へ整理し、83項目を30項目に再編 構成見直し
株主総会・情報提供 有価証券報告書の株主総会前提出を原則化。3週間以上前の提出が最も望ましいと補足 新規追加
取締役会の役割・責務 取締役会の役割を「成長の道筋の構築と戦略的方向付け」「リスクテイクを支える環境整備」「独立した客観的立場から経営陣を監督」の3機能に整理。資本コストを踏まえた収益計画・資本政策や、成長投資・事業ポートフォリオ見直し等の説明も求める 明確化・一部新規
サステナビリティ 取締役会の役割・責務の、独立した「原則」に。ISSB・SSBJ基準に言及 明確化・一部新規
多様性確保 多様性の観点を拡充し、目標や人材育成方針等の開示を整理 明確化
ステークホルダー協働 人的資本投資、適切な分配、公正・適正な取引、適正な価格転嫁を明記 新規追加・明確化
リスク管理・内部通報 サイバー、経済安全保障、情報流出を例示。情報開示に関する通報も明記 新規追加・明確化

出典:金融庁資料に基づきMS&ADインターリスク総研が作成

【参考情報】
2026年7月21日付金融庁HP
https://www.fsa.go.jp/news/r7/singi/20260721.html

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