災害時、企業は何をどう伝えるべきか?相次ぐ大規模な災害から考える情報開示の4つのポイント
[このコラムを書いたコンサルタント]

- 専門領域
- 危機管理、コンプライアンス、製品安全、食品安全
- 役職名
- リスクマネジメント第三部
リスク・クライシスマネジメントグループ長
主席コンサルタント - 氏名
- 佐藤 崇 Takashi Sato
2026.9.4
今年も日本各地で地震や豪雨など大規模な災害が相次いでいます。このような災害が発生した際、企業は自社の被災状況や事業への影響などについて、さまざまなステークホルダーへの情報開示を求められることがあります。
一方で、企業自身も被災して混乱する中で「誰に、何を、どのタイミングで伝えるべきか」の判断は容易なことではありません。
そこで本コラムでは、災害時に企業が押さえておきたい情報開示の考え方や、平常時から備えておくべきポイントについて解説します。
流れ
- 災害が起きたら、企業は必ず情報開示すべきなのか?
- 誰に、どんな情報を伝えればよいのか?
- 情報は「いち早く出す」ことが求められるのか?
- 混乱の中でも、ぶれずに情報を発信するには?
災害が起きたら、企業は必ず情報開示すべきなのか?
いわゆる危機管理広報として一般的にイメージされるものに、企業の不祥事などがありますが、災害時の情報開示とは、目的が異なることを押さえておく必要があります。
前者の主な目的は「不祥事により失墜した企業の信用回復」ですが、災害時においては、従業員、地域社会、取引先、お客さま、株主といったさまざまなステークホルダーに対して、「自社がどういう状態にあるのかを知らせること」が主な目的になります。
発災時においては、人命の保護や安全確保が最優先になるため、ステークホルダーに伝えるべきメッセージがないのであれば、必ずしも情報開示を急ぐ必要はありません。まずは、誰に対して情報を伝える必要があるのかを整理し、情報開示の要否を判断することが重要です。
実際に、大規模な地震で工場が被災した企業であっても、プレスリリースを出さずに、個別に取材に応じているケースもありました。取引先と個別に連絡を取り、必要な情報を伝えられているのであれば、プレスリリースを出さないという判断もあり得ます。
重要なのは、「災害が起きたから開示する」と考えるのではなく、誰に情報を伝える必要があるのかを起点に、開示の要否を判断することです。
誰に、どんな情報を伝えればよいのか?
では、誰にどのような情報を伝えるべきなのでしょうか?
災害時に伝える情報としては、以下のような内容が挙げられます。
- 従業員の安否
- 施設や設備の被災状況
- 工場の操業状況
- 業績への影響
ただし、これらを一律に開示すればよいわけではありません。ステークホルダーによって関心が異なるため、「誰に何を伝えるのか」を整理することが重要です。
例えば、取引先に必要な情報を個別に伝えられていたとしても、株主にとっては十分な情報が開示されているとは限りません。株主の立場からすれば、被災による事業への影響や復旧の見通しが分からなければ、不安を感じる可能性があります。
このように、ステークホルダーが変われば、必要とする情報も変わります。それぞれの立場を踏まえて、伝える内容を考えることが大切です。
情報は「いち早く出す」ことが求められるのか?
災害時における情報開示で押さえておきたい別のポイントは、「企業自身も被災している」という観点です。
これを踏まえると、災害時にはあらゆる情報を一刻も早く開示しようとするのではなく、情報の内容やステークホルダーのニーズに応じて、急いで開示すべきものと、そうでないものを見極める必要があります。その際に念頭に置いておきたいことは、拙速に情報開示をして混乱を生じさせない点です。
一方で、「急いで開示しなくてもよい」ことと、「一度開示した情報をそのままにしてよい」こととは別です。災害時は状況が刻々と変化し、新たな事実が判明したり、被害や復旧の状況が変わったりします。このため、一度情報を開示した後も、状況の変化に応じて適切なタイミングで情報を更新していくことが重要です。
混乱の中でも、ぶれずに情報を発信するには?
災害時には、十分に情報を集約できないことも考えられます。こうした状況では、まず確認できた事実だけを伝え、未確認の情報は安易に発信しないことが重要です。
例えばメディアからの問い合わせがあった際、事実関係が確認できていない情報については無理に回答せず、「確認中です」と伝えることが重要です。
そのためには、収集した情報を次の3つに分けて整理しておく必要があります。
- 確認済み
- 確認中
- 未確認
このように整理しておくことで、問い合わせを受けた際にも、確認できていることとまだ確認できていないことを切り分けて対応することができます。
もう1つのポイントは、会社として発信する内容にぶれや食い違いが生じないようにすることです。プレスリリースと、広報担当者や現地の責任者の説明が異なると、かえって混乱を招く恐れがあります。
具体的には、社内外への情報発信について「誰が、どう発信するのか」をあらかじめ決めておき、対外的な問い合わせ窓口を一本化しておくことも有効です。
発災後の混乱の中で、こうしたしかるべき対応を実現するためには、次の3点に留意することが望ましいです。
- 収集した情報の一元化と当該情報のステータスの明確化(確認済み/確認中/未確認)
- それらの情報を踏まえたステークホルダーごとの情報開示方針の決定
- 当該方針を踏まえて、ステークホルダーごとに「何を」「いつ」「誰が」「どの媒体」で伝えるのかを一覧化した「情報開示のマスターシート」の用意
このような対応をしておけば、開示内容の齟齬や情報の抜け漏れ、伝える順番の間違いなどを防ぎやすくなります。
災害は日本のどこで起きるかわかりませんので、地域の拠点が情報開示の対応を迫られる場面も出てきます。本社内だけでなく地域の拠点とともに訓練や演習も実施しながら、情報開示に向けた対応力の強化を図っていくことが重要です。
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