TNFD開示が前年比で倍増 『ステータスレポート2026』の調査結果
2026.10.30
TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、投資家のニーズと期待を深く把握すること、自然関連の実際の報告実態を追跡すること、LEAP v2.0の改訂に反映するための情報収集を目的に、2026年6〜8月においてTNFDレポートの開示状況、評価の実施状況、投資家や企業の自然関連リスクの認識など、アンケート形式で実態調査を行った。実態調査の結果に加え、複数の機関投資家向けデータプロバイダーの開示状況・指標関連データなどと照合して検証した結果を、9月30日に『TNFDステータスレポート2026』として発表した。TNFDがステータスレポートを作成・公表するのは昨年に続き2回目であり、主に進展する市場慣行を示すものとして報告されている。
TNFDの調査では、企業・金融機関などの報告作成者、投資家などの報告利用者、コンサルティング会社やデータ提供機関などの市場支援者を対象に、自然関連の評価・戦略・報告・開示に直接関与する回答者から意見を集め、527件の回答を得ている。
レポートの内容として最も重要なのは、自然関連開示が急速に拡大していることである。現在、56の国または地域で1,154の組織がTNFD開示を行っており、これは前年から100%増加となっている。このうち日本は報告数で突出しており、およそ24%を占め、2位のイギリスの10%を大きく引き離している。
また、投資家の認識変化も特筆すべき点で、自然損失は単なる環境問題ではなく、物理的リスク、移行リスク、システミックリスクとして理解されはじめていることが示された。加えて、投資家は自然の損失が金融市場全体や自らのポートフォリオに与える影響を懸念しており、昨年に引き続き、特に水、土地利用、森林減少、汚染といったテーマに強い関心を示している。また、投資判断に用いる情報としては、「グローバル中核開示指標とセクター別開示指標の併用」が74%と重視されている。加えて場所固有情報の必要性については投資家の65% が「強くそう思う」、32% が「そう思う」と回答しており、合計97%が必要と評価していることが分かった。これは、自然関連リスクが業種だけでは判断できず、地域、拠点、サプライチェーンの条件によってリスクの現れ方が大きく異なることによる。
一方で課題も明確である。投資家の多くが、自身や投資先企業のLEAP分析の結果が投資家のスチュワードシップやリスク管理に有用であったと認識している一方、その結果が資本配分やポートフォリオ構築へ十分反映されているとは言いがたい。企業側でも自然関連評価の多くはLEAPアプローチに基づいて進められているものの、依存・インパクトの定量化、財務マテリアリティとの接続、データ品質の確保は依然として難しい。また、レポートは、義務的報告への期待が70%以上と高いこと、国際的に一貫した基準が求められていること、そして自然関連報告が気候関連報告と同様に比較可能性を持つべきだという市場の要請も示している。
本レポートから、自然関連情報は「あるかないか」の段階を越え、「比較でき、使えるか」が問われる段階に入ったことが示唆された。今後企業に求められるのは、開示の有無ではなく、自然に起因する事業リスクを見える化し、経営管理に組み込むかにある。そこにこそ、今後の自然関連課題に関する開示対応の本質があると言える。
【参考情報】
2026年9月30日付
https://tnfd.global/publication/tnfd-2026-status-report/
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