コラム/トピックス

中国の多様性

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
事業場における防災・安全管理
役職名
インターリスク・上海 総経理
中国へは、2006年4月、(現)三井住友海上(中国)有限公司の初代リスクマネジメント部長として赴任。2010年3月、インターリスク上海の設立にあわせ、初代総経理に就任。
執筆者名
海司 昌弘 Masahiro Kaishi

2014.1.27

執筆時現在(13年12月初旬)、上海での粒子状物質PM2.5(以下、PM2.5)の値は、500を越え、窓の外から見える景色も真っ白な状態で100m先の視界さえもが不鮮明である。同時期に大霧気象警報が発令されているが、霧の原因なのかPM2.5の原因なのか、多くの飛行機の離発着もが困難になっている。

私自身、上海に駐在し8年になるが、このような状況は初めてであり、原因は諸説言われ対策を色々講じているようであるが、即効的な改善には程遠く、目覚ましい発展を見せるここ中国において、近代化、工業化を突き進める一方、これまでの様々な犠牲が積み重なって招いた代償であるかにも感じている。

そのような状況下、日本にいる会社関係者、友人等から「中国での生活は大変ですね、大丈夫ですか?」といった安否のお気遣いを頂くメッセージを多数頂いた。PM2.5は、昨年来、北京やハルピン等東北地方では、数値が500を越える「厳重汚染」や「重度汚染」と言った状況はあったが、上海では、完全によそ事と捉えており、いよいよ上海まで及んできたか...と言った感覚である。

ただ残念なことに、日本のメディア報道を見ると、北京=中国、上海=中国と言わんばかりに、特定の地方や地域で発生していることが、あたかも中国全土で発生しているかのごとく、中国バッシング一色のように感じられることが非常に多い。

以前、北京で発生したPM2.5問題の際にも、同様に多数の「中国での生活は大変ですね」というメッセージを頂いた。北京から上海まで、飛行機で約2時間、新幹線で5時間と言った離れた地方においても、北京で発生していることは中国全体のリスク、よって上海も同様である、といった構図なのだろうか。

仮にだが、日本国内において、九州地方で発生した集中豪雨災害について、東京に住む方に「大変ですね」といったメッセージを発するだろうか?

中国への出張経験がある方であれば、中国の各都市の所在地や距離感等イメージを一定お持ち頂けていると思うが、メディア上でしか中国を見聞きされない方にとっては、「北京」「上海」の場所がせいぜい分かる位で、中国の広さ、引いては日本とは比較にならない各地方間の距離や様々な面での格差、「広州」「大連」「成都」...と言った地方ごとのイメージがつかれない方は、実際 想像以上に多いのではないだろうか?

国土は、日本の約25倍の面積、人口は、約10倍を擁する中国である。東西南北の広大さに起因する地域ごとでの気象条件の違い、また民族の多様性等も踏まえた文化・風習やリスク事情・感性の多様性と言ったものまで、金太郎飴的とも評される日本の様々な環境と比べ、同じものさしでは到底推し量れないと考える。

もちろん、PM2.5やその他様々なリスク事象につき、地理的環境が離れているから別物と判断することは出来ず、中国全土に共通の要因が潜んでいる可能性も十分に考えられる。

ただ、中国に長く暮らす私にとっても、何でもかんでもが 「中国=危ない」ものではなく、「中国は一つでない」「多様性を持った集合体である」ということを是非皆さんにご理解頂きたい。重ねて、PM2.5の発生原因の究明、根本的な解決策が迅速に対処されることを心から願うばかりである。

以上

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