
第35号「オリンピック・アジェンダ2020」が示唆する持続可能な成長への処方箋
2015.1.1
1. はじめに
2014年12月8日、国際オリンピック委員会(IOC)の第127次総会で、オリンピック・ムーブメント改革の戦略的ロードマップ「オリンピック・アジェンダ2020」の全40項目が全会一致で承認されました。
この改革案は、招致プロセスの改革と持続可能な開発を重視するトーマス・バッハIOC会長の意思に基づいて約1年をかけて作成されたものです。会長の指示で14のワーキング・グループが設置され(図表1)、IOC理事会、オリンピック・サミット、IOCの各委員会への諮問を経て、IOC関係者の合意形成が進められました。これと並行して、オリンピック・ムーブメント関係者のみならず、様々なステークホルダー(学識者、NGO、ビジネス、等)から1,200のアイデアと43,500通の電子メールを集めて、ワーキング・グループに共有するというマルチ・ステークホルダー・プロセスを経ています。1)
このアジェンダに沿った招致プロセスが適用されるのは2024年の夏季オリンピックからとされていますが、すでに準備を進めている大会についても考慮される可能性があります。平昌(2018年)や東京(2020年)での分散開催や東京での野球・ソフトボール復活などが巷間で議論となっているのは、アジェンダの内容が引き金になっています。
しかしながら、アジェンダが提言しているのは、このような個別の事情ではなく、「持続可能性(sustainability)」「信頼性(credibility)」「若者(youth)」を重点テーマとすることによって、唯一無二の存在であるオリンピック競技大会を堅守し、社会におけるスポーツの存在を強化することです。
本稿では、このIOCのビジョンを踏まえて、東京オリンピックを機会に日本の社会やビジネスのすすむべき方向を考察いたします。
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