『安全運転管理体制』の推進に向けて(企業リスクとしての交通事故)【交通リスク情報 2012年度 No.1】
2012.5.1
はじめに
本年4月以降に連続して起こった交通事故は、多数の死傷者が発生し事故状況も悲惨であったことから、自動車使用者の責任の重大さと損失の大きさが改めて認識されることとなった。
本件が企業経営に与える影響は計り知れず、さらに事故の責任は運転者にとどまらず企業経営者に及ぶ可能性があり、自動車運送事業者(バス、トラック、タクシー)と自家用車を使用する企業の経営者・管理者にとって、自動車事故防止対策としての『安全運転管理』を見直す契機となったものと推察する。
現在、事故原因の究明が進められているが、本稿では「企業リスクとしての交通事故」を概説し、特に自家用車を使用する一般企業の安全運転管理体制推進の一助としたいと考える。
1. 企業活動と交通事故
(1) 企業活動にともなう交通事故
発生件数を通行目的・第1当事者別にみると、私用(買物、訪問等)が67.5%(約48万件)で圧倒的に多い。一方業務使用は17.3%(約12万件)であるが、通退勤14.0%(約10万件)を含めると31.3%(約22万件)となる(第1当事者とは事故における過失の重いものをいう)。
従って、企業は使用する社用車の交通事故だけでなく、従業員のマイカーによる通退勤事故を含め、企業活動にともなう事故として、安全運転管理対策を講じることが強く求められている。
(2) 交通労働災害発生状況
企業活動にともなう交通事故は労働災害であり、型別発生状況は図表-2のとおりである。
全労働災害に対する交通事故の死亡災害は墜落・転落に次いで24.9%(第2位)であるが、重大災害状況(一時に3人以上の災害事故)では54.5%であり、圧倒的に第1位である。交通労働災害のウエイトはこの数年ほぼ変わりなく推移しているが、大変な高率である。本実態を踏まえ、企業は交通事故防止取組みを従業員の交通法令遵守にのみ期待するのではなく、その他の労働災害と同様に総合的な事故防止対策が求められている。
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