レポート/資料

2023年度 No.4「健康経営の推進におけるメンタルヘルス不調者低減の取り組み」

2024.3.1

要旨

  • 昨今、「人的資本」に対する注目度が高まる中、各企業には人的資本経営・開示の実践の高度化が求められている。
  • この高度化には、人事関連データ(以下、HRデータと表記)分析に基づく、人・組織の課題特定から、人材戦略の策定・実行、効果検証等が必要となる。
  • 一方で、HRデータの活用を妨げる問題として、「システム・データのバラバラ問題」・「データ分析人材の不足・不在問題」が存在している。
  • 今後企業に求められるのは、こうした問題の解決に向け、HRシステムおよび分析人材といった「HRデータの分析基盤」を構築することであり、本問題への取組みの巧拙が人的資本投資の成果を左右すると考えられる。

1. 人的資本経営・開示における企業の取組み姿勢

近年、内閣官房、経済産業省から人的資本経営・開示に関する指針が出され[1][2][3]、2023年1月には全上場企業に対して有価証券報告書での人的資本開示が義務化された。経営や人事を取巻く環境が大きく変化する中、人材版伊藤レポートに記載されている“人的資本が企業価値向上の源泉である”という認識が世の中に広まり、ステークホルダーは企業の人的資本への取組みに注目している。この人的資本を重要視する流れは一過性に留まらず、今後さらに注目度は高まることが予想できる。

2. 人的資本の取組みにおけるHRデータ・システムの活用意義

上場企業において有価証券報告書で人的資本の指標と目標を開示するようになり、HRデータを集計する際の苦労話を聞く機会が増えている。しかし、本来的にはHRデータを開示資料の作成のみに活用するのではなく、日々の人的資本経営の実践において積極的に活用することが、人的資本経営・開示の高度化につながると考えている。その理由は以下4点にまとめられる。

(1) 経営層の意思決定支援

人材版伊藤レポートに記載がある通り、人的資本への取組みには経営層の深い関与が求められる。経営層が人的資本に関する深い議論やタイムリーな意思決定を行っていくには、その土台となるHRデータとそれを分析する基盤が必要となる。

(2) ステークホルダーへの説得力向上

人的資本の開示が義務化されたことに伴い、外部のステークホルダー(主に、投資家や求職者)にも自社の人的資本の取組み状況や成果を伝え、対話しなければならない。その際に、テキスト等の定性情報だけでは外部のステークホルダーが見たときに分かりやすく状況や成果を伝えることが難しい。そのため、定性情報と定量情報(KPIの達成状況や経年推移などの実データ)を合わせて開示することで、外部のステークホルダーにも伝わる説得力ある内容とすることが必要となる。

(3) 人材戦略の実行性担保

昨今、経営戦略の実現において、人材戦略が重要なアジェンダの一つになっている。経営戦略を実行するのは人材であることから、適切な人材戦略を立案・実行することで経営戦略の実現確度が高まるのは言うまでもない。そして、人材戦略を遂行するためには、正確な課題特定と施策実行後の効果検証を行い、人事施策の精度を高めていくことが重要となる。

(4) 人事業務の効率化

特に上場企業においては、有価証券報告書での人的資本開示義務化に伴い、人的資本情報の集計や人材戦略を外部のステークホルダーに伝えるための資料作成など、人事部門に新たな業務が付加されていると推察する。要員も時間も有限の中、これまでの業務もこなしつつ、人的資本に関する新たな業務に対応するには、HRシステム等のテクノロジーを活用した人事業務の効率化は必須であるといえるだろう。

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