コラム/トピックス

アメリカ 子どものおもちゃのリコール:吸水性ビーズや強力磁石で特徴的な事例(2023年KIDの報告書)

2024.7.16

子ども用製品の安全性向上に取り組んでいる米国NPO法人、KID Kids In Danger)は2024年3月27日、2023年に行われた子ども用製品のリコールに関する報告書を公表しました。この報告書は、米国消費者製品安全委員会(CPSC)が公開した 2023年のリコール情報を元にKIDが分析を行ったものです。本報告書によれば、2023年には101件の子ども用製品がリコールされ、2013年以来の多さとなっています。

個数ベースでは2023年は8,400万個と例年より大幅に多くなっていますが、このうち8割超(7,000万個)はある特定の製品(1)に関するもので、当該製品を除けば過去数年並みといえます(図1、以降の図はKID報告書に基づきMS&ADインターリスク総研で作成)。

図1 リコール製品の件数と個数の推移

製品のカテゴリーで見ると、衣類が全体の25%(27件)と最も多くなっています(図2)。乳児用品も24%(26件)と多くなっていますが、これは近年施行された乳児の睡眠用製品の安全規則に違反したものとされています。また、米国でしばしば見られる家具のリコールは、ここ4年間で減少した(2023年は2件)としています。

図2 子ども用製品のリコール件数の製品カテゴリー別割合

なお、玩具のリコールで特徴的な事例があるとして、以下の2件を挙げています。

  1. 吸水性ビーズ
    2013年以降初めて、水で膨らむビーズ(吸水性ビーズ)がリコールされた。これは、吸水性の高いポリマー製の小さなビーズで、水に曝されると元の大きさの100倍程度まで膨らみ、子どもが誤飲した際に腸閉塞などを起こす可能性がある。リコールされた製品は、乳児の死亡等が報告されている。
  2. 強力磁石
    小型で強力な磁石製品に関しては、2件のリコールが行われた。強力な磁石を飲み込んだ場合、胃や腸の穿孔等が発生する可能性がある。2022年12月に発効した安全基準では、バラバラになり易い磁石を有した製品は、誤飲しない大きさにするか誤飲しても内蔵が損傷しないよう磁力が十分に弱いものにすることを義務付けている。
    危害別にみると、火傷が最も多く22%(25件)、小部品等による窒息19%(21件)、落下12%(14件)などが続いています(図3)。火傷に関してリコールが行われた製品は、いずれも連邦基準を満たしていない子ども用パジャマで、大半がオンラインで販売されていました。
図3 子ども用製品のリコール件数の危害別割合

リコール実施前に、子ども用製品で死者が発生したケースは4製品(6人)、怪我が発生したケースは14製品(106人)であったとしています。

米国のリコール状況がそのまま日本に当てはまるわけではありません。しかし、吸水性ビーズや小型で強力な磁石は日本でも同様の事故が発生しており、2023年5月には消費生活用製品安全法(消安法)で規制が行われることになりました(2)。子ども用製品を取扱う事業者においては、類似の事例も少なくないことから、海外のこうした報告書も参考にしながら製品の安全性向上に努めていくことが求められます。

出典: KIDの発表
https://kidsindanger.org/highest-number-of-nursery-product-recalls~

1)リコール対象となったのは菓子の一種で、容器から小部品が脱落し窒息の恐れがあるとされている。
https://www.meti.go.jp/press/2023/05/20230516002/20230516002.html
2)玩具の新たな規制について

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また、昨今の技術革新や市場の変化等を踏まえた製品安全に関わる旬のトピックスを連載します。

この記事は「PLレポート(製品安全)<2024年6月号>」(2024年6月発行)の掲載内容から抜粋しています。
PLレポート全文はこちらからご覧いただけます。
https://rm-navi.com/search/item/1720

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