米国司法省が不正通報報奨制度の運用を開始
2024.11.25
2024年8月1日、米国司法省は企業内不正通報報奨パイロットプログラム(Corporate Whistleblower Awards Pilot Program)の運用を開始した。本制度により、司法省へ企業内不正に関する情報提供を行った個人に対し、一定の条件を満たした場合に報奨金の支払いが行われることとなった。2024年10月9日、45以上の組織で構成される国際非営利団体のThe Science Based Targets Network(SBTN)は、海洋域の目標設定ガイダンス(草案)(以下、「海洋版草案」)に対する意見公募を10月22日まで実施すると発表した。意見公募を経て、第1版(v1.0)は2025年中に発表される予定である。
これまで公益通報に関する報奨金制度の対象※1ではなかった不正行為を対象としており、司法省が企業不正に関する有益な情報を入手するための新たな手段となる。
また、本報奨金制度の運用によって不正行為に対して厳しい目が向けられることで、コンプライアンス態勢の更なる強化を促進させるとともに、不正判明時に、企業に不正行為の速やかに自主申告させることで、自主的かつ早期に是正を図ることに狙いがある。本制度の運用は3年間を予定しており、定期的な評価・見直しが行われる。
本制度のポイントは以下のとおり。
(1)対象となる不正
- 金融機関および金融関係者の違反行為(送金事業の未登録、米国金融機関への詐欺・妨害を含む)
- 国外における詐欺や賄賂に関連する違反行為(外国腐敗行為防止法、外国恐喝防止法、マネーロンダリング法違反等を含む)
- 国内における公務員への賄賂やリベートの支払い等
- 連邦虚偽請求法(False Claims Act)の対象外となる医療や、ヘルスケアに関連する詐欺等違法行為(患者、投資家、非政府機関等に対して損害を与える詐欺行為等)
(2)通報者への報奨金提供の流れ
- 通報者が司法省の受付用フォームを入力し、対象となる企業不正行為の関連情報を提供する。
- 通報者から提供された情報が刑事または民事起訴に繋がり、企業に対して100万ドル以上の資産没収が行われることになった場合、司法省が通報者の提供した情報の有用性や調査協力の程度、事前の内部通報の実施有無等の観点に基づいて報酬割合の評価実施のうえ、報奨金が支払われる(没収資産のうち最大3割)。
(3)通報された企業が起訴を免れ得るケース
通報者が不正行為を司法省に通報した場合でも、司法省から企業に連絡するより前(通報後最大120日以内)に通報された企業が司法省に対する自主申告を行い、「刑事部門企業案件取締・自己開示方針」(Criminal Division Corporate Enforcement and Voluntary Self-Disclosure Policy)※2に基づく全面的な調査協力や適時適切な是正措置等の対応を実施することにより、同社は起訴を免れ得る。
※1)米国における「企業内不正通報報奨パイロットプログラム」以外の、公益通報制度による報奨金支払い対象行為
- 米国司法省:「連邦虚偽請求法」(False Claims Act)違反
- 米国証券取引委員会:「連邦証券法」(Federal Securities Laws)違反
- 米国商品先物取引委員会:「商品取引法」(Commodity Exchange Act)違反
- 金融犯罪取締ネットワーク:「マネーロンダリング防止法」(Anti-money Laundering Laws)違反、「銀行秘密法」(Bank Secrecy Act)違反
※2)Criminal Division Corporate Enforcement and Voluntary Self-Disclosure Policy
刑事部門の企業案件における自発的な自己開示、調査の全面協力、適時適切な是正措置に関する不起訴の推定基準等を示す方針(2024年3月更新)
https://www.justice.gov/criminal/criminal-fraud/corporate-enforcement-policy
【参考情報】参考情報:米国司法省HP:
https://www.justice.gov/criminal/criminal-division-corporate~
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この記事は「ESGリスクトピックス2024年度 No.8」(2024年11月発行)の掲載内容から抜粋しています。
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