コンサルタントコラム

食品安全マネジメントシステムFSSC22000 V6に対応する上で気を付けるべき点は?~①審査対象組織に対する要求事項の主な変更点~

2024.8.22

これまでPLレポート(食品)では、食品関連事業者において食品安全・食品衛生の実現のために求められる体制構築・運用のあり方について解説してきました。2021年度は「よくある食品安全マネジメントシステムの認証取得後のお悩み20選」、2022年度は「食品安全文化を醸成するための処方箋」、2023年度は「食品安全・食品リスクマネジメント高度化のためのDX導入の勘所」と題し、連載しました。

食品安全マネジメントシステムの規格の一つにFSSC22000がありますが、2023年4月1日に最新版としてVersion6(V6)が発行されており、Version5.1(V5.1)の認証を取得している事業者は、2025年3月31日までにV6への移行審査を受ける必要があります。今年度は「食品安全マネジメントシステムFSSC22000 V6 への対応における留意点」と題し、FSSC22000 V6(1)について、V5.1からV6への変更点と対応のポイントの解説を4回にわたって連載します。

第1回目は、FSSC22000の審査対象組織に対する要求事項について、V5.1からV6への主な変更点について解説します。

FSSC22000とは?

FSSC22000は、FSSC財団(Foundation FSSC)によって開発された食品安全のためのマネジメントシステム規格で、食品安全に関する国際的な民間団体であるGFSI(Global Food Safety Initiative)により、食品安全の認証スキームの一つとして承認されています。なお、FSSCはFood Safety System Certification(食品安全システム認証)の略です。

FSSC22000は、ISO22000の要求事項、その部門の技術仕様書に基づき規定された前提条件プログラム(ISO/TS22002-1等の一般衛生管理に関する管理プログラム)と、それらに加えて必要な追加要求事項から構成されています。

FSSC財団がV6の開発を開始した主な要因は、表1のとおりです。認証機関の要求事項として参照していたISO規格の改訂へ対応するとともに、各国で取り組みが進んでいるSDGsの達成に向けた組織の対応を支援するため、V6がリリースされました。

【表1】FSSC22000 V6の開発を開始した主な要因

  1. 更新されたISO22003-1:2022(食品安全マネジメントシステムの審査および認証を行う機関に対する要求事項)の組み入れ
  2. 国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する組織を支援するための要求事項の強化
  3. 継続的改善の一環としての編集上の変更および修正

出典:FSSC財団「FSSC22000スキーム 第6.0版」

審査対象機関に関するV5.1からV6への変更点は?

V5.1からV6への変更で、FSSC22000 V6スキーム(表2参照)のパート3以降の認証機関および認定機関に関する要求事項も変更されていますが、本レポートでは一般の食品関連事業者に影響を与えるものとして、パート1、パート2の審査対象機関に関する変更を取り上げます。

【表2】FSSC22000 V6スキームの構成
パート 内容
パート1 スキームの概要 認証の適用範囲を含めた認証の背景及び詳細
パート2 審査対象組織に関する要求事項 FSSC22000の認証を取得または維持するために、ライセンスを受けた認証機関が組織の食品安全マネジメントシステムを審査する際のスキーム要求事項
パート3 認証プロセスに関する要求事項 ライセンスを受けた認証機関が実施する認証プロセスの遂行に関する要求事項
パート4 認証機関に関する要求事項 組織にスキーム認証サービスを提供する、ライセンスを受けた認証機関に対する要求事項
パート5 認定機関に関する要求事項 ライセンスを受けた認証機関に認定サービスを提供する、承認された認定機関に対する要求事項

出典:FSSC財団「FSSC22000スキーム 第6.0版」をもとにMS&ADインターリスク総研が作成

FSSC22000の審査対象組織に対する要求事項について、V5.1からV6への主な変更点は以下のとおりです。

パート1 スキームの概要

表3にフードチェーンカテゴリーの変更を一覧で示しました。変更されたカテゴリーの内容は、以下のとおりです。

  • 動植物性製品の一次生産(カテゴリーA)が削除され、カテゴリーAに該当していたものはカテゴリーBⅢ「収穫された植物に関する活動」及びカテゴリーC0に含まれることとなった。
  • ペットフードのカテゴリーDⅡaとDⅡbは削除され、ペットフードは食品カテゴリーCⅠからCⅣに含まれることとなった。
  • 輸送と保管のカテゴリーはGカテゴリーに統合された。
  • FⅡ仲介業務カテゴリー(仲買業/取引/電子商取引)が新たに追加された。

    【表3】V5.1とV6のフードチェーンカテゴリー一覧

    出典:FSSC財団「FSSC22000スキーム第6.0版」をもとにMS&ADインターリスク総研が作成

    パート2 審査対象組織の要求事項

    表4に審査対象の組織の要求事項の変更状況をまとめました。新規追加、詳細化等があった要求事項の概要は以下の通りです。これらの変更は、SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」につながるものといえます。

    新規追加:V5.1には無かった5つの要求事項が新たに追加されました。
    2.5.8 食品安全及び品質文化:食品安全や品質文化の構築に関するもの
    2.5.9 品質管理:ISO9001 の要素に関するもの
    2.5.15 設備管理:既存設備の変更や新規設備の導入の際変更することによるリスクやその性能について把握しているという証拠を提出できるようにすることを求めるもの
    2.5.16 食品ロス及び廃棄物:食品ロスや廃棄を低減するとともに、製品への汚染を防止するために求められるもの
    2.5.17 コミュニケーションの要求事項:緊急事態が発生した場合には、認証機関からの指示を受けて対応することが求められるもの
    詳細化:以下3つの要求事項について対象や範囲の明確化等が行われました。
    2.5.5 ロゴの使用:FSSC ロゴを使用できる範囲の詳細化
    2.5.6 アレルゲン管理:アレルゲンリストなど、アレルゲン管理計画書への記載が必要な項目が6つ追加
    2.5.7 環境モニタリング:対象を「関連する病原菌、腐敗、指標細菌」と明記。環境モニタリングプログラムの有効性や適切性を定期的に見直すことについても明記
    項目追加:既存の要求事項に新たな項目が追加されました。項目追加の例を2 つ挙げます。
    2.5.1 サービスと購入資材の管理:包装材の原材料に関するリサイクルのルールや基準を定めることを求める要件の追加
    2.5.2 製品のラベリング及び印刷物:食品偽装とならないような検証システムを構築することを求める要件の追加

    【表4】V5.1からV6への改訂における「審査対象組織に対する要求事項」変更状況

    出典:FSSC財団「FSSC22000スキーム第6.0版」をもとにMS&ADインターリスク総研が作成

    おわりに

    本稿では、審査対象組織に対する要求事項について、V5.1からV6への主な変更点をご紹介しました。
    次回以降は、追加・変更があった要求事項の具体内容について解説する予定です。

    1)Foundation FSSC Delivering trust and impact for global food safety with FSSC 22000
    https://www.fssc.com/schemes/fssc-22000/

    「PLレポート」は四半期に1回、国内外の製品安全、PLリスクに関連するニュースを紹介します。
    また、昨今の技術革新や市場の変化等を踏まえた製品安全に関わる旬のトピックスを連載します。

    この記事は「PLレポート(食品)<2024年7月号>」(2024年7月発行)の掲載内容から抜粋しています。
    PLレポート全文はこちらからご覧いただけます。
    https://rm-navi.com/search/item/1759

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