解説コーナー|食品安全マネジメントシステムFSSC22000 V7.0への対応における留意点 【第1回】まず押さえたいFSSC22000 V7.0の変更点と対応の進め方
2026.7.16
はじめに
2026年5月1日にFSSC財団(Foundation FSSC)よりFSSC22000のVersion 7.0(以下「V7」という)がリリースされた※1。振り返れば、2023年4月にVersion 6.0(以下「V6」という)が発行され、比較的短期間で再度の見直しが必要になったため、V6取得済みの事業者、とりわけ実務担当者にとっては、「また変わるのか」、「今度は何をどこまで直せばよいのか」と、負担感や戸惑いを感じやすい改訂と考えられる。
そこで、「食品安全マネジメントシステムFSSC22000 V7.0への対応における留意点」と題し、SSC22000 V7について、V6からの変更点と対応のポイントについて、実務担当者の立場を踏まえ、V7対応を必要以上に重いものとしないために、なぜ改訂が行われたのか、V6から何が変わるのか、いつまでに対応すべきか、負担を抑えてどう進めるかを整理する。なお、本稿では、V6の認証取得済みの食品関連事業者を前提として解説する。
※1)FSSC-22000-Scheme-Version7.0
https://www.fssc.com/fssc-22000/documents/version-7-documents/
https://www.fssc.com/wp-content/uploads/2026/04/FSSC-22000-Scheme-Version-7.pdf
1.なぜV7への改訂が行われたのか
今回の改訂は、単なる編集上の修正ではなく、FSSC22000の前提となる規格や外部要請の変化を受けた見直しである。主な改訂理由と食品関連事業者にとっての実務上の影響について、図表1に整理した。
| 主な改訂理由 | 実務上の影響 |
|---|---|
| 新しいPRP(Prerequisite Programs:前提条件プログラム)規格への対応 | ISO/TS 22002-x中心の理解から、ISO 22002-100:2025と業種別ISO 22002-x:2025の組合せで見直す必要が生じる。 |
| GFSI Benchmarking Requirements 2024※との整合 | 審査で説明すべき根拠、記録、運用の整合性がこれまで以上に求められる。 |
| SDGsを踏まえた要求事項の強化 | 食品ロス、包装設計、継続的改善など、食品安全以外の経営課題とつながる論点が明確になる。 |
| フードチェーンカテゴリーの明確化 | 認証範囲、適用カテゴリー、サブカテゴリーの再確認が必要になる場合がある。 |
| 継続的改善と明確化 | V6で整備した仕組みが、そのままで十分かどうかを見直す必要が生じる。 |
※)GFSIが定める食品安全認証スキームの国際的な承認基準であり、要求事項、審査プロセス、力量、ガバナンス、信頼性確保等に関する評価項目
FSSC22000は、ISO22000をベースに、前提条件プログラムとFSSC22000の追加要求事項で構成されている。従前の改訂のように、追加要求事項への新たな追加はない。一方で、V6で整備した仕組みをそのまま維持すれば足りる改訂でもない。
特に、PRP、認証範囲、仕様管理、表示・印刷管理、アレルゲン管理、食品防御・食品偽装、食品安全及び品質文化、食品ロスなどは、V6取得済みの事業者でも点検が必要になると考えられる。
2.V6とV7との差分
読者の立場からすると、知りたいのは規格構成そのものではなく、「自社のどこに影響があるのか」という点だと思われる。そのため、図表2では、V6取得済みの一般的な加工食品メーカーを念頭に、V7対応で確認の優先度が高い論点から順に整理した。
並び順は条項番号順ではなく、後続の見直し作業への影響の大きさと、実務担当者が無理なく、着手しやすい順を意識している。
また、読者がV7本文を確認しやすいよう、論点ごとに主な参照先もあわせて示す。
| 実務テーマ | V6での対応 | V7での主な変更点(差分)と参照先 | 確認すべき自社の取組状況 |
|---|---|---|---|
| PRP参照規格 | ISO/TS 22002-xやPAS 221等を前提とした整理 | ISO 22002-100:2025の共通要求としての導入、業種別ISO 22002-x:2025 への移行 ◆ 参照先:Part1 1.1、Part1 3、表1、表1.1、Part2 2.4 |
PRPマニュアル、一般衛生管理手順、点検様式、教育資料、内部監査項目の棚卸し |
| 認証範囲・適用区分 | V6のカテゴリー理解を前提とした運用 | サブカテゴリーの明確化、認証範囲の適切性確認の明確化 ◆ 参照先:Part1 3、表1、表1.1 |
現在の認証書の適用範囲が、自社製品や工程の実態に合っているかの確認 |
| 仕様管理・試験所分析 | 規格書や検査成績書の整備を中心とした対応 | 食品安全目的の仕様に対する科学的根拠の重視、食品安全上重要な分析における試験所の力量確認を重視 ◆ 参照先:Part2 2.5.1 |
規格値の根拠、試験の用途、外部試験所の認定範囲または内部試験管理の確認 |
| 表示・版下・印刷管理 | 包装材メーカー向け論点としての理解 | ラベルや印刷物を作成する組織全般に範囲を拡大 ◆ 参照先:Part2 2.5.2 |
表示承認、改版管理、旧版資材管理、現場での照合手順の確認 |
| 食品防御・食品偽装 | 計画書の整備と定期見直しを中心とした対応 | ISO 22002-100との関係を踏まえた再整理、担当者の知識・力量の重視 ◆ 参照先:Part2 2.5.3、2.5.4 |
担当者の教育記録、役割分担、見直し記録の確認 |
| 食品安全及び品質文化 | V6で新たに整備した仕組みの運用 | 経営層による資源確保と全要員のコミットメントの実証重視 ◆ 参照先:Part2 2.5.8 |
教育、現場巡回、改善提案、ヒヤリハット、レビューへの反映状況の確認 |
| 食品ロス・廃棄物 | V6で新設された要求事項への対応着手 | 測定可能な目標、期限、評価の考え方の重視 ◆ 参照先:Part2 2.5.16 |
ロスの指標、目標、期限、管理方法の確認 |
| 包装設計・製品設計 | 製品開発や賞味期限の観点を中心とした確認 | 食品保護、保存期間、食品ロス低減、消費者への情報提供まで含めた設計視点の追加 ◆ 参照先:Part2 2.5.13 |
包材変更時の評価、設計時の確認項目、情報伝達方法の確認 |
V7では、V6で追加・強化された項目について、移行審査やその後の維持審査・再認証審査の場面で、文書、記録、運用の整合がこれまで以上に確認されると考えられる。そのため、文書を一つ差し替えて終えるというより、既存の手順、記録、教育、内部監査の整合を見直す作業が中心になる。
3.いつまでにV7への対応をすべきか
V7対応では、「何が変わるか」と同じくらい、「いつまでに何を終える必要があるか」が重要である。
| マイルストーン | 時期 | 実務上の見方 |
|---|---|---|
| V7発行 | 2026年5月1日 | 差分確認と準備開始のタイミング |
| V6審査の実施期限 | 2027年4月30日まで | ここまではV6での審査が可能 |
| V7移行審査期間 | 2027年5月1日から2028年4月30日まで | この期間に移行審査への対応が必要 |
| V7のみ適用される時期 | 2028年5月1日以降 | 以後はV7前提での運用が必要 |
V6取得済みの事業者では、次回審査が通常の維持審査なのか、再認証審査なのか、移行審査に当たるのかによって準備の進め方が変わる。まずは認証機関に次回審査時期と適用バージョンを確認し、自社の準備期間を逆算することを推奨する。
4.負担を抑えながら進めるためのロードマップ
V6対応から比較的短い期間で再度の見直しが必要になるため、担当者としては、できる限り手戻りを抑えて進めたいところである。そのためには、最初から全項目を一律に見直すのではなく、「確認」「整理」「棚卸し」「見直し」「検証」「審査準備」の順で、必要な作業を必要な時期に進める方が効率的である。
以下の図表4では、一例として、審査時期から逆算して、V7移行対応を段階的に進める考え方を示した。
| 対応段階 | 審査12か月前目安 | 審査9か月前目安 | 審査6か月前目安 | 審査3か月前目安 | 審査直前 |
|---|---|---|---|---|---|
| 確認段階 | 次回審査時期確認、適用バージョン確認、認証範囲確認 | 認証機関への追加確認 | — | — | 説明範囲の最終確認 |
| 整理段階 | V6とV7の差分把握、重点論点抽出 | 対応方針整理、優先順位付け | — | 未対応項目整理 | 説明論点確認 |
| 棚卸し段階 | — | 関連文書、帳票、教育資料、内部監査資料の棚卸し | 改訂対象文書の確定 | 改訂漏れ確認 | 提示資料確認 |
| 見直し段階 | — | — | 文書、帳票、現場運用、教育内容の見直し着手 | 運用定着、不足補正 | 文書と運用の整合確認 |
| 検証段階 | — | — | 必要な記録蓄積、検証開始 | 内部監査、是正処置、マネジメントレビュー | 最終自己点検 |
| 審査準備段階 | — | — | — | 証拠整理、想定質問整理 | 提示資料、担当者、当日動線確認 |
このロードマップのポイントは、最初から全項目を一律に改訂しようとしないことである。自社にとって影響の大きい論点を絞り込み、既存のV6対応資産を活かしながら、差分がある箇所だけを優先的に見直す方が、スリムかつスマートに進めやすくなる。
また、内部監査とマネジメントレビューを、審査直前の形式的な確認ではなく、「V7対応が実際に回り始めているかを確認する場」として使うことが重要である。
おわりに
今回の改訂は、V6で整備した文書や手順を単にV7の表現へ読み替える作業ではなく、既存の仕組みが現在の運用実態に沿って有効に機能しているかを改めて見直す機会でもある。特に、V6対応を終えて間もない事業者にとっては、短期間で再度の見直しが必要になること自体が負担になりやすく、何をどこまで見直せばよいのかが見えにくいことも悩ましさの一因と考えられる。
そのため、今回の対応では、要求事項を一律に追いかけるのではなく、自社への影響が大きい差分を見極め、既存の仕組みを活かしながら優先順位を付けて進めることが重要である。
次回以降は、上述の図表2で示したV6とV7との差分と確認すべき自社の取組状況の順番を踏まえながら、関連する論点ごとに食品事業者の具体的な取組例を示していくことを予定している。
食品におけるPL(Product Liability)リスクとは、食中毒や異物混入、表示ミス等により第三者に健康被害や損害を与えるリスクをいいます。
下記レポートでは、食品PLの最新動向をわかりやすく解説します。以下のリンクからご覧ください。
https://rm-navi.com/search/item/2585