アメリカでリチウムイオン電池の安全対策に関する複数の法案が可決
2024.10.2
米国ニューヨーク州議会は2024年5月21日、小型軽量の移動機器に搭載されるリチウムイオン電池の安全性の強化を目的とした一連の法案を可決しました。7月11日にはニューヨーク州知事が本法案に署名し、90日以内に法制化されることとなります。
電動アシスト自転車や電動スクーター、電動キックボード等の小型軽量の移動機器(以下、マイクロモビリティ)の人気は世界的に高まっています。しかし、ニューヨーク市消防局の統計によると、同市では2019年から2023年の間に、リチウムイオン電池を原因とする火災が400件以上発生し300人が負傷、12人が死亡しています。
こうした状況を背景にニューヨーク州議会では、マイクロモビリティで使用されるリチウムイオン電池の安全確保に向けた検討が行われてきました。
今回可決されたの9法案ありますが、以下はその一部です。
法案 | 内容> |
---|---|
リチウムイオン電池の製造・販売基準の設定 | マイクロモビリティに使用されるリチウムイオン電池について、一定の基準に従って製造されていることを販売の条件とする |
リチウムイオン電池の被害軽減の義務付け | マイクロモビリティやリチウムイオン電池の販売や修理等を行う事業者に対し防火対策や消火対策を講じることを義務付ける |
プラグの警告タグの義務付け | マイクロモビリティの充電コードに、使用していないときはプラグを抜くことを明記した赤いタグを付けることを義務付ける |
取扱説明書の提供義務付け | マイクロモビリティ及びマイクロモビリティ用のリチウムイオン電池の販売事業者に対し、顧客に取扱説明書を提供することを義務付ける |
一連の法案はリチウムイオン電池そのものの基準だけでなく、マイクロモビリティの製造・販売等の事業者への被害の未然防止策の義務付けなど幅広い事項を対象としており、当該議会の危機感の表れと受け取ることができます。
一方、米国下院においても5月15日、CPSC(米国消費者製品安全委員会)に対しマイクロモビリティに搭載されるリチウムイオン電池の安全基準を策定するよう求める法案(Setting Consumer Standards for Lithium-Ion Batteries Act)が可決されました(今後上院で審議予定)。米国全土でマイクロモビリティに搭載されるリチウムイオン電池のリスクについて関心が高まっていることがうかがえます。
マイクロモビリティは日本においても利用が広がっており、搭載されたリチウムイオン電池に起因すると思われる火災事故も発生しています。マイクロモビリティやリチウムイオン電池に関わる事業者は、関連する規制の状況を注視するだけでなく、規制を先取りした自主的な安全上の取組みがより一層求められます。
出典: ニューヨーク州上院のリリース
https://www.nysenate.gov/newsroom/press-releases/2024/senate-advances-slate-lithium-ion-battery-safety-standards
米国下院の法案
https://www.congress.gov/bill/118th-congress/house-bill/1797
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この記事は「PLレポート(製品安全)<2024年9月号>」(2024年9月発行)の掲載内容から抜粋しています。
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