
鉄道会社における安全文化醸成取組 【労災リスク・インフォメーション <No.36>】
-
ご登録済みの方は
[このレポートを書いたコンサルタント]
- 会社名
- MS&ADインターリスク総研株式会社
- 所属名
- リスクコンサルティング本部 リスクマネジメント第一部 リスクエンジニアリング第三グループ
- 執筆者名
- 上席コンサルタント 杉浦 拓未 Takumi Sugiura
2025.2.3
- 鉄道会社において安全は経営の最重要課題であり、全社的に安全に対する取り組みが重層的に展開されている。
- 全ての従業員向けの行動指針もあり、最も重要なことが簡潔に記載されている。
- 安全に対する取り組み、事故の風化防止の取り組みをソフト面・ハード面で紹介していく。
1.安全に対する考え方・向き合い方
安全が経営の最重要課題とされる鉄道会社では、「安全にゴールはない」という考えのもと徹底的な安全に対する取り組みがされている。安全が脅かされる状態や労働災害は従業員の命だけでなく、お客さまの命に直結する可能性が非常に高いからである。全社員が毎日安全に対して取り組んではいるが、それを持続させるため、レベルアップするための活動も行っている。
一方、安全が全ての基礎であるということは理解しているが何をすれば良いかわからない企業も見受けられる。そこで本稿では、鉄道会社が行っている安全に関する取り組みを前職での実体験をもとに紹介していく。
2.安全綱領~全社員の行動指針~
お客さまに安心して鉄道を利用してもらうことが最も大事である鉄道会社では、絶対に安全という信頼を得なくてはならない。これは昔から言われ続けていることであり、運輸省令第55号として「運転の安全に関する省令」が定められ、その中に安全綱領が明記されている。そしてこの安全綱領こそ「絶対に守らなくてはいけないこと」であり、この内容に基づいた行動をすることを徹底づけられている。
- 安全は輸送業務の最大の使命である。
- 安全の確保は、規定の順守及び執務の厳正から始まり、不断の修練によって築きあげられる。
- 確認の励行と連絡の徹底は、安全の確保に最も大切である。
- 安全の確保のためには、職責を超えて一致協力しなければならない。
- 疑わしい時は、あわてず、自ら考えて、最も安全と認められるみちを採らなければならない。
これは鉄道会社の一つで掲げられている安全綱領である。他の鉄道会社でも多少の言い回しの違いはあるが、ほぼ同じ内容が掲げられている。会社の目指すべき姿等が書かれたポスターを全ての執務室に貼っている企業も多々あると思うが、安全綱領も同様に同社のすべての職場のすべての執務室に貼られている。ちなみに、東日本大震災で津波からの避難の際にマニュアル通りではなかったが地元の方の意見通りに避難をして被害者ゼロという事象があった経緯から、5の部分に「あわてず、自ら考えて、」が追加された。
この鉄道会社では、安全綱領を研修や勉強会など、事あるたびに全社員で唱和することで安全意識を再確認する文化がある。それだけでなく、社内試験では安全綱領を全て書かされることもあり、誤字脱字が許されないのは言うまでもないが、句読点の位置まで正確に問われたので、会社の安全に対する意識の高さを感じさせられる瞬間と言えるだろう。
3.確認会話の重要性~ヒューマンエラー防止の取り組み~
安全綱領の3にも書かれているように、安全の確保に最も大切なものの一つとして確認の励行が挙げられている。確認を怠るとヒューマンエラーに直結し、それが事故や労働災害の発生原因にもなる。ここでは安全への取り組みのソフト面として確認会話を紹介していく・・・
ここまでお読みいただきありがとうございます。
以下のボタンをクリックしていただくとPDFにて全文をお読みいただけます(無料の会員登録が必要です)。
会員登録で レポートを全て見る

ご登録済みの方は