
経営層の多様性はリスク対応力向上に重要、経産省ダイバーシティレポートで指摘
2025.5.28
経済産業省は2025年4月7日、「企業の競争力強化のためのダイバーシティ経営(ダイバーシティレポート)」を公表した。本レポートは、イノベーション創出を目指す企業や国際競争力を高めていきたい企業の経営層に向けて、企業価値向上につながるダイバーシティ経営の考え方についてまとめたものになっている。
レポートでは、ダイバーシティ経営が商品開発や業務効率向上などにおけるイノベーションや外部評価の向上を通じ、企業価値向上につながることも触れられているが、企業がリスクに対処していくうえで以下のような意義がある旨も言及している。
- テクノロジーの急速な進化やグローバル化等、予見可能性の低い事業環境に置かれる中、多様な知・経験を確保していくことで、経済的損失を低減するなどの企業のレジリエンスを高めることができる。
- 社長・CEOら経営陣が、ビジネスモデルに即した知・経験の多様性を考慮して選定されることは、有事・社会変化への警戒を怠らず、状況に適応することに役立つ。
近年発生した企業不祥事をみると、経営層や意思決定者の同質性によって、リスクの大きさや対処方針の評価・判断ミスが発生し、企業経営の根幹を揺るがす事態に発展するケースが相次いでいる。不祥事を検証した第三者委員会の調査報告書でも、「人材の多様性の確保」は、重要な改善すべきポイントとして厳しく指摘されている。
本レポートでは、このような事態に陥ることを意識し取り組んでいる事例が紹介されている。ダイバーシティの確保がリスクへの対応策として活用されており、経営戦略上、重要な要素になっていることを示している。
一方で、本レポートによれば、「経営陣自体、これまで同質性の高い組織環境における特段の不都合を感じていない」「それ(多様性)によって事業にどうプラスになるのか分かりづらい」という経営層の声も依然と多いという。グローバルな経営環境や労働市場の供給構造が大きく変化する中で、同質性の高い組織は、変化への柔軟な対応力に乏しい。企業のレジリエンスを高め、持続的な成長に資するダイバーシティ経営は、リスクマネジメントの観点からも喫緊の課題といえるだろう。
【参考情報】
2025年4月7日付 経済産業省HP:https://www.meti.go.jp/press/2025/04/20250407002/20250407002-a.pdf