
SBTN、陸域目標設定の方法論を更新。目標設定におけるオプション追加
2025.6.26
国際非営利団体Science Based Targets Network(SBTN)は2025年4月29日、企業向けの自然に関する科学的根拠に基づく目標設定枠組み「Science Based Targets for Nature(SBTs for Nature)」の陸域に関する目標設定方法論の第2版案を公表した。5月27日までパブリックコメントを募集し、2026年にコメントを受けた正式版の発行を予定している。SBTs for Natureによる陸域に関する目標設定は、企業が陸域生態系へのインパクトを管理することで、持続可能な方法で事業活動を行っていくことを目的としている。
初版※からの主な更新箇所として目標設定におけるオプションが大幅に追加されたことが挙げられる。陸域における目標設定は下表のとおり大きく3つの項目で構成される。そのひとつである「土地保全・再生」に関する土地面積の目標設定においては、「土地の環境フットプリントの削減」のみが目標として設定可能となっていたが、新たに「自然状態の土地被覆面積」が追加された。また、土地の健全性に関する指標として、土壌有機炭素、土壌侵食、陸域酸性化の3つについても目標設定が可能となった。


※改訂版で追加された項目を緑字および下線により表記
また、その他の更新として「土地利用と環境への影響に関する会計ガイドライン(AGILE)」が公表された。AGILEでは、企業が土地利用に関して科学的根拠に基づく目標(SBTs)を設定するための基準とフットプリントを計算するためのガイドラインおよび方法が示されている。企業においてはAGILEを活用した目標設定が望まれる。
SBTs for Natureにおける目標設定はその基準が野心的であり、企業にとってはハードルが高いものとされている側面がある。今回の改訂により、目標設定のオプションが増えたことに加え、土地利用の転換をゼロとする目標日の設定猶予の追加もあり、企業はやや目標設定に取り組みやすくなったといえる。今回の更新を通して、企業の環境リスク軽減が促されることで、企業の事業運営とサプライチェーンにおけるレジリエンス強化が進むことが期待される。
※初版の方法論については、以下のレポートを参照のこと
MS&ADインターリスク総研「サステナブル経営レポート第26号 企業に求められる土地利用・転換への目標設定 -SBTs for Nature 陸域ガイダンスの解説-」(2025/4)https://rm-navi.com/search/item/2106
【参考情報】
2025年4月29日付 Science Based Targets Network HP:https://sciencebasedtargetsnetwork.org/news/news/science-based-targets-for-land-public-consultation-open-now-for-version-2/