世界初、生物多様性に取り組む組織向けの国際規格ISO17298が発行
2025.12.9
国際標準化機構(ISO)は2025年10月7日、組織が生物多様性に資する行動を支援する世界初の国際規格である、生物多様性分野のマネジメント規格「ISO17298:生物多様性 — 組織の戦略と事業における生物多様性の考慮 — 要求事項及び指針」を発行した。この規格は組織(企業、地方自治体、NGOなど)の規模や業種を問わず、あらゆる組織が生物多様性への依存、インパクト、リスク及び機会を評価し、実際の行動に移すための実用的な枠組みを提供している。
これまで、生物多様性が企業の持続可能性に与えるインパクトの重要性や対応の緊急性は認識されてきたが、生物多様性の観点を戦略や事業に統合するためのISOマネジメント規格は確立されていなかった。そのため、アプローチの断片化などが進み、実践までの道のりが複雑で困難であった。本規格は、生物多様性を単にサステナビリティ報告の枠にはめ込むのではなく、ガバナンスやリスク管理の中核として企業経営の実践に組み込むことを目的として、企業が生物多様性に関するインパクトを評価し、それらを戦略に効果的に反映させるためのロードマップを提供している。本規格は特に以下の点を支援する。
- 自社の活動が生物多様性とどのように関わっているかを評価する
- オペレーションとランドスケープ両方の視点から優先的に取り組むべき行動を特定する
- 測定可能な目標を設定し進捗をモニタリングする
- 生物多様性の取り組みをより広範なサステナビリティの取り組みに統合する
本規格は60ヵ国以上の専門家で構成された委員会で検討され、TNFDとの密接な協力下で開発されており、ISO14001(環境マネジメントシステム)、ISO26000(社会的責任に関する指針)、TNFD、持続可能な開発目標(SDGs)、昆明–モントリオール生物多様性枠組みなど、世界で広く用いられている既存の制度や取り組みと整合性がとれるよう設計されている。さらに今後、重要な分野については規格を拡充することも予定されている。
現在、全世界GDPの1/2以上である44兆米ドルが自然に中~高程度に依存しているとされている(世界経済フォーラム2020年)ことから、本規格は企業のレジリエンスのための重要なツールとなる可能性がある。特に企業は、レジリエンス向上を目的とした自然関連課題への対応を経営戦略へ組み込む際に本規格を活用することで、投資家からの信頼を得ることにつながる。
【参考情報】
2025年10月7日付 ISO HP
https://www.iso.org/news/2025/10/standard-17298_biodiversity
https://www.iso.org/standard/17298#lifecycle
E(環境)・S(社会)・G(ガバナンス)に関する国内外の重要な話題を毎月レポート形式でお届けしています。
2025年12月発行の「ESGリスクトピックス 2025年度 No.9」の全文PDFは、以下のリンクからご覧いただけます。
https://rm-navi.com/search/item/2358