コラム/トピックス

国内企業の非財務情報開示が充実も、本業寄与の「説明力」が課題、IR実態調査

2025.8.7

日本IR協議会が2025年6月12日に公表した「第30回IR活動の実態調査」によると、国内上場企業のIRやサステナビリティへの対応の意識がさらに向上したことが分かった。一方で、本業のビジネスへの統合や企業価値向上への寄与についての説明で課題も浮き彫りになった。

調査結果によると、ESGなどの非財務情報開示を「実施している」と回答した企業が75.9%と前回調査から2.4ポイント増加。また、ESG・SDGsと関連付けた開示やマテリアリティの特定と企業価値向上への貢献などの開示も着実に増加していた。さらに、「非財務情報を中長期的な経営戦略のKPI(成果指標)と結び付けて説明している」との回答も同5.8ポイント増の44.8%だった。これらから、非財務情報・ESG情報の開示および経営戦略への統合などの開示が充実する傾向が分かる。

一方で、非財務情報の開示や投資家などとの対話に関する課題認識の質問では、「本業のビジネスと非財務情報とを分かりやすく関連付けること」(60.0%)が前回同様に最多。次に「自社のESGへの取り組みが、中長期的に会社の業績といった経済的な貢献につながる蓋然性について、説得力のある証明を行うこと」(57.9%)が続き、多くの企業が開示の「質」と「説明力」を課題と感じていた。ESG取り組みが企業価値向上にどのように寄与するかの説明の必要性を認識し、非財務情報と財務的成果の関連付けに苦慮する姿が浮かび上がる。

さらに、東証プライム上場で時価総額上位の企業から有価証券報告書でのサステナビリティ情報開示で適用が義務付けられたSSBJ基準への対応について、2027年3月期の適用時期に先立って任意に開示すると回答した企業は「2026年3月決算から」が2.6%、「2025年3月決算から」も1.2%だった。一方、「未着手」との回答が50%。そのうち、プライム市場上場企業19.8%、スタンダード・グロース・その他市場上場企業30.2%だった。少数の先行企業が任意適用に向けて動き始めた半面、大半は義務化の先送りを見越した“様子見”姿勢のようだ。この姿勢の違いは、将来的なレピュテーションリスクや投資家からの信認格差につながる懸念もある。

そのほか、統合報告書の作成企業の割合は同 8.6 ポイント増の52.5%で、初めて過半数を超えた。ただし、「作成にあたる人員が不足していること」(46.4%)や、「ステークホルダーのニーズが充足されているか不明瞭であること」(41.6%)などを課題に抱える企業が多かった。

本調査は2025年3月から4月にかけて、3月末時点の全上場会社4,113社を対象に以下について調査を実施。回収率は23.4%(962社)だった。

【参考情報】
2025年6月12日付 日本IR協議会HP: https://www.jira.or.jp/activity/research.html

会員登録でリスクマネジメントがさらに加速

会員だけが見られるリスクの最新情報や専門家のナレッジが盛りだくさん。
もう一つ上のリスクマネジメントを目指す方の強い味方になります。

  • 関心に合った最新情報がメールで届く!

  • 専門家によるレポートをダウンロードし放題!

  • お気に入りに登録していつでも見返せる。