コラム/トピックス

金融庁「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」を公表

2025.8.22

金融庁は2025年6月2日、「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」(以下、「事例集」という)を公表した。本事例集は、取締役会の実効性向上に積極的に取り組む東京証券取引所プライム市場またはスタンダード市場に上場している18社へのヒアリング結果を集約・分析したものである。

本事例集では、取締役会の機能強化に向けて、「戦略的アジェンダセッティング」「リスクテイクを支える環境整備」「実効性の高いモニタリングを実現するコミュニケーションの深化」の観点から、さまざまに工夫された取り組みを整理している。特に社外取締役に対しては、社内取締役との間の情報の非対称性を解消すべく、事務局が追加的な配慮をしている場合が多く、事務局との適切な距離感を保ちつつ、必要な情報提供が受けられるよう、社外取締役からの能動的な働きかけも有用と指摘している。

<機能強化の取り組み例>
戦略的アジェンダ
セッティング
  1. 機関設計変更のタイミングは、取締役会への付議事項見直しの契機となっ
    ている。アジェンダを一度見直して終わりにするのではなく、常に現状を
    評価し、絶え間なく会議の実効性を追求すべきとの声。
  2. 事務局と綿密な連携を図りつつ、アジェンダ選定に議長が果たすリーダー
    シップは重要。
  3. 取締役会前の事前説明や根回しのあり方は、会社のカルチャーや考え方に
    依拠する。取締役側が事務局に能動的に働きかけることも必要。
リスクテイクを支
える環境整備
  1. 多くの企業で、関係部署間での連携強化や兼任、組織上の位置づけの工夫
    等を通じた事務局機能の強化の取り組みが行われている。
  2. 特に伝統的な日本企業においては、一般的に法務・総務等コーポレート部
    門間の垣根が高いが、事務局が関係部署の結節点となり、横ぐしを刺して
    機能強化を図る取り組みが見られた。
  3. 取締役会の実効性評価は手段であり、目的ではないとの声。評価結果を活
    用して、課題を特定し改善するため、定点観測を行いつつ着手の容易な部
    分から漸進的に取り組んでいる事例があった。
実効性の高いモニ
タリングを実現す
るコミュニケーシ
ョンの深化
  1. 一部の企業では、事務局がハブとなり、非公式な場も活用して、各取締役
    と事務局とのコミュニケーションを強化することにより、意見を入念に把
    握し、情報の非対称性の解消に努めている。
  2. 取締役会の開催にあたり、対面・バーチャルといった開催形式や、議論時
    間の確保に向けた進捗管理の工夫を行い、取締役、経営陣、事務局間での
    コミュニケーションの深化を図っている事例が多い。
  3. 社外取締役が事業への理解を深めるための様々な取り組みや、現場との交
    流機会を設定している事例があった。事務局が社外取締役の知見を最大限
    活用する姿勢も有用。

出典:金融庁「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」の3頁をもとに当社作成

本事例は上記のほかにも、「コーポレートカルチャー」「レジリエンス」「人的資本経営」「女性活躍推進」等、多岐にわたる取り組みも紹介している。

金融庁によると、本事例集は最終版ではなく、今後、企業と投資家の議論の場を設けること等を通じて、継続的に質を高め、更新していくことを想定。コーポレートガバナンス改革の実質化に向けて、関係者と連携しつつ、企業の取締役会の機能強化に関する取り組み事例の収集や共有を継続していくという。

企業の置かれた環境やこれまでの歴史等はさまざまであり、取締役会の機能強化に向けた取り組みにベストプラクティスがあるものではない。一方、各社の課題において共通する部分も多い中で、本事例集で紹介された取り組み例は、参考になる部分は少なくない。今後、本事例集は随時更新されていく予定であるため、その動きを注視されたい。

【参考情報】
2025年6月2日付 金融庁HP: https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20250602/05.pdf

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