コラム/トピックス

TCFD・TNFD統合的開示で環境省が手引き、企業の負担軽減と価値向上の促進が目的

2025.9.19

環境省は2025年6月24日、「環境課題の統合的取組と情報開示に係る手引き」を公表した。TCFD・TNFDを始めとした最新の国際フレームワークに準拠した統合的な情報開示を実践するための指針を提示するのが目的。

深刻な環境危機に対応し、気候変動対策や生物多様性の保全、循環型社会の形成などの要対応課題の拡大を踏まえて、環境課題の相互関係に基づく具体的取り組みの実施と情報開示への社会的要請の高まりを受けたもの。こうした状況への対応の一環として、構成・内容の類似点が多く、国内で普及が進むTCFD(気候変動)・TNFD(自然資本)を統合的開示するための方法の具体例を示している。

中でも、特に重要な観点に、「気候変動は自然資本と相互関係性がある」ことを前提にした、「ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の一体設計」による“統合的アプローチ”での取り組み・開示を挙げる。気候は自然と相互関係性があり、一体的に捉えることで、網羅的な分析や戦略的な意思決定・リスク管理が可能になるとの前提だ。読み手の負担軽減や理解の深化も見込める利点があるという。

図1:統合的アプローチのイメージ(本編1-26ページより抜粋)

統合的アプローチのイメージ
統合的アプローチのイメージ

統合的アプローチの具体的な開示例として、気候変動・自然資本共通のガバナンス・リスク管理体制と評価軸、評価方法を記載した伊藤園を取り上げている。また、キリンやリコーを、リスク・機会項目を関連する環境課題ごとに共通化し、財務影響分析を一括で行う体制の構築・運用を説明した例として挙げた。

特にリコーは、TCFDとTNFD両方の情報を同一の開示媒体で開示し、ガバナンス・リスク管理についてはチャプターも統一。TCFD・TNFDの各要請事項に対する開示箇所を対応表で明示している。

図2:リスク・機会項目と関連する環境課題を紐づけた開示事例
(キリン・リコー)(本編1-31ページより抜粋)

リスク・機会項目と関連する環境課題を紐づけた開示事例(キリン・リコー)
リスク・機会項目と関連する環境課題を紐づけた開示事例(キリン・リコー)

手引きは、統合的アプローチについて、段階的な導入と継続的な改善を推奨する。これによりCDPなどの外部評価への対応も含め、複数の開示要請への一体的な対応やガバナンスやリスク管理体制の横断的整備、迅速な意思決定、課題間のシナジー・トレードオフ把握による費用対効果の高い施策立案など様々な効果がある。その結果、外部評価機関や投資家からの高評価を得て企業価値向上も期待できるほか、ISSBやSSBJなどグローバル基準への対応も円滑になると見込む。同時に、経営層やサステナビリティ担当部門のみならず、関連する多様な関係者の参画を前提としており、企業全体として統合的アプローチを浸透・活用していく重要性を強調している。

図3:統合的取り組みと情報開示の中長期的な発展イメージ(手引き 5ページより抜粋)

統合的取り組みと情報開示の中長期的な発展イメージ

【参考情報】
2025年6月24日付 環境省 報道発表資料 HP:https://www.env.go.jp/press/press_00029.html

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