コラム/トピックス

新たなモビリティ導入におけるリスクマネジメント~「住民同士の送迎」のケース

[このコラムを書いたコンサルタント]

専門領域
次世代モビリティ実装にかかるリスクマネジメント、交通リスクマネジメント
役職名
新領域開発部 次世代モビリティ室 主任コンサルタント
執筆者名
宇佐 祐樹 Yuki Usa

2022.3.28

現在日本各地において新たなモビリティサービスの導入に向けた実証実験や社会実装が進んでいる。その要因に、特に地方部における公共交通における厳しい現実や、高齢者人口の増加に伴う事故件数の増加の課題がある。さらに新型コロナウイルスによる外出への意識変化が拍車をかける形となっている。国土交通白書によると、回答者の約4割が、コロナ禍を契機として公共交通の持続可能性に対する懸念が高まったと回答している。

本稿では、公共交通を補完する新たなモビリティサービスの一例として、京都府舞鶴市における「住民同士の送迎」取組と、それらにおけるリスク管理の考え方について紹介する。

京都府舞鶴市は日本海に面する人口約8万人の自治体である。舞鶴市によると、日常移動の多くを占める通勤通学においては、自家用車を用いる人が全体の68%を占めている。

市では「共生型MaaS」をコンセプトとした送迎サービスの実証実験を実施している。送迎エリアは公共交通網が比較的弱い地域やバス路線のみの地域に限定し、鉄道の駅やバスの停留所、主要施設(病院など)までの移動を、実証に協力する住民ドライバーが担った。当該実証では、当社において住民同士の送迎固有の事象を含めたサービス全体を俯瞰した包括的なリスクの把握を目的としたリスクアセスメントを実施し、発生確率や危害の大きいリスク事象に対しての対策の立案と実装支援を行った。

「住民同士の送迎」を始めとし、新たなモビリティサービスを展開するにあたっては、サービスの交通特性やサービスフロー、体制を踏まえたリスク事象の特定と対策を実装することが必要となる。そのなかで、既存のリスク管理手法の応用および新たなRM手法の開発が重要となる。

当該サービスにおいては様々なリスク事象が想定されるが、本稿では住民ドライバーと管理者の関係に着目したい。住民同士の送迎は地域住民の自発的な協力で成り立つという側面がある一方、旅客事業としての側面もある。実証実験は無償の取組であるが、有償でサービス実装を目指す場合は道路運送法上の各種義務を履行する必要がある。住民ドライバーには当該サービスの旅客運送としての側面を丁寧に説明したうえで、運行管理における各種取組への協力を求めることが必要となってくる。これらを曖昧にした場合、事故等が発生した際に民事・刑事上の責任をドライバーだけでなく運営主体が負う可能性があり、結果として輸送サービスが継続できない事態に陥ることも想定される。

持続可能なサービス実現の観点から有償化を目指す場合、管理者側の管理コストが大きくなっていく。当社では、それらの負担軽減を目指し、交通事業者が取り組む「運輸安全マネジメント」を参照した安全管理体制の構築支援、および損害保険会社のテレマティクス技術により取得された走行データ等を用いた「パーソナライズド教育」の開発を進めている。これはテレマティクス技術等によって個人の運転性向を把握することが可能となった中で、運転性向に応じた教育コンテンツを提供し、より効率的かつ効果的な安全運転教育につなげていくことを目指すものである。

当社では、引き続きこれらの新たなソリューションの開発を推進し、今後ますます拡大することが見込まれる次世代モビリティの取組の安全性向上を図り地域課題の解決に資していく。

以上

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