コラム/トピックス

中国の反不正競争法改正の概要と企業における対策のポイント

2025.10.21

2025年10月15日から中国の改正反不正競争法※1が施行される。改正法では、不正競争行為に関する規定が拡充された。不正競争行為の疑いをかけられた場合、当局による立入検査や事情聴取、財物の封印・押収などの措置が行われる可能性がある。また、法律上の責任が認められた場合には、損害の賠償や罰金の支払い、営業許可の取り消しなどが行われる可能性もあるため、現地に進出する日本企業にも影響が大きいものと想定される。

主な改正のポイントは以下のとおり。

<主な改正の概要>

項目 改正の概要
(1)収賄行為の禁止を追加
  • 商業賄賂の受領側も規制対象であることを明文化
  • 法人と個人の双方を同時に追及する「両罰制」の導入
  • 過料上限の引き上げ(300万元以下から500万元以下
    へ) など
(2)混同行為(誤認される行為)の
   規制範囲の拡充
  • 他人のアプリ名やネットユーザー名などの識別情報を無
    断使用する行為の禁止
  • 他人の商品名称や登録商標などを検索キーワードに設定
    する行為の禁止 など
(3)ネットプラットフォームに
   おける禁止行為の明確化
  • 他の事業者のデータを不正に取得・使用することや、他
    の事業者に対して虚偽の取引や評価(いわゆる「サク
    ラ」行為)、故意・悪質な返品などを実施する行為の禁
    止 など
(4)大企業などによる中小企業への
   優越的地位の濫用規制
  • 大企業が中小企業に対し、不合理な支払い期限や支払い
    方法などの取引条件を強要することや、支払いを遅延さ
    せることを禁止 など
(5)域外適用の追加
  • 中国市場の競争秩序を乱し、中国国内事業者または消費
    者に損害を与えると判断される場合、同法や関連法規に
    基づいて処理

日本貿易振興機構「反不正競争法改正版が可決、中小企業への支払い遅延の禁止など明記」※2をもとに当社にて作成

企業においては、法令や運用の動向を注視しつつ、国内外における自社のコンプライアンス体制の見直しを図ることが望ましい。具体的には、従業員の禁止行為を明示した内部規定の作成、対外支払いや贈与などのリスクを伴う行為に対する承認ルールの見直し、教育・研修を通じた法令やルールの周知徹底、内部通報窓口の設置・適切な運用などが挙げられる。

なお、今般の改正を受け、JETROより商業賄賂規制に関する各種事例の紹介や同規定に対する企業の対策などについてレポート(2025年9月17日)※3が発行されている。商業賄賂規制への抵触を防ぐための自己点検チェックシートをはじめ、自社のコンプライアンス取組を見直すために有益な情報が掲載されているため、取り組みにあたってはこちらも参照されたい。

※1)2025年6月27日、第14期全国人民代表大会常務委員会第16回会議にて可決された。
※2)JETRO「反不正競争法改正版が可決、中小企業への支払い遅延の禁止など明記(2025年07月04日)」
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/07/0a933405e9be2dde.html
※3)JETRO「『事例から学ぶ』中国における商業賄賂規制の最新動向と日系企業への実務的示唆」
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2025/02/5482b1b3afc84354.html

【参考情報】
2025年9月 日本貿易振興機構(JETRO)HPなど

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