COP30をわかりやすく解説 脱炭素経営に取り組む企業が注目すべき今後の動向とは?
2025.12.25
今や企業にとって避けては通れない課題となっている脱炭素経営ですが、企業の皆さまは普段どのように取り組まれていますでしょうか?
こうした中、11月10日から11月22日にCOP30(国連気候変動枠組条約第30回締約国会議)が、ブラジル連邦共和国パラー州ベレンで開催されました。
どんなことが議論され、どのような枠組みが採択されたのか。そして、脱炭素経営に取り組む企業の皆さまが注目すべき今後の動向について、わかりやすく解説します。
流れ
- GHG削減目標計画の提出状況は?
- COP30の成果は?
- 今後の脱炭素に向けた動向は?
- 脱炭素経営に取り組む企業に求められることとは?
GHG削減目標計画の提出状況は?
COP30の開催前の2025年2月は、各国が、10年後の2035年の温室効果ガス(以下、GHG)の削減目標「国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution、NDC)」の提出期限でした。
これは、パリ協定※1の締約国はNDCを「国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)」に5年ごとに提出・更新することが求められているためです。
※1 パリ協定…2015年にフランス・パリで開催されたCOP21で採択された2020年以降の地球温暖化対策に関する国際的な枠組み。「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」が掲げられている。なお、COPの後にある数字は開催回数を示していて、COP30は30回目の会議。
しかし、2025年2月10日の締め切りの時点で提出したのは、全締約国のうちわずか13か国だったため提出期限は9月まで延長されましたが、3割程度にとどまりました。アメリカにおいてはトランプ大統領がパリ協定からの離脱を通告したこと、EUでは目標設定に当たって加盟国間にて対立が起こったことが、各国の提出遅延につながりました。
こうした中、日本は2025年2月18日に新たなNDCを提出して、COP30では脱炭素社会実現に向けて着実に歩みを進めていることを発信しました。また、温室効果ガス観測衛星(GOSAT)をはじめとした最新システムの紹介や、各国閣僚との会談を通じ、日本の先進性をアピールしました。
COP30の成果は?
COP30の成果としては、「ベレン・ポリティカル・パッケージ」が発表されて、特に関心の高い気候変動対策に関する緩和策や、資金に関わる包括的な内容を含む「グローバル・ムチラオ決定」が採択されました。(「ムチラオ」とは、ポルトガル語で「共同作業・協働・共に働く」という意味です)
このなかでは、気候変動対策の実行への移行が強調され、特に、次の点が決定されています。

- 気候資金の流れを気候変動の取り組みに整合させることを目的とした議論を加速させるため、実務者級の対話、ハイレベルラウンドテーブルを行うこと。
- 途上国への技術支援強化のための「ベレン・技術実施プログラム(TIP)」を開始し、2027年から毎年グローバル対話を開催し、2028年はハイレベル閣僚対話を開催すること。
今後の脱炭素に向けた動向は?
COP30ではパリ協定から10年の節目ということもあり、GHGの排出量を実質的にゼロにする「ネットゼロ」に向けて様々な議論がされました。
2年前に開かれたCOP28では、2050年までにネットゼロを達成するために化石燃料からの移行を加速させることや、各国ごとに異なる道筋を考慮したうえで分野別に排出量削減に貢献するなどの明言がされています。
一方、今回のCOP30では、ネットゼロに向けた脱炭素へのロードマップについて多くの国々の賛同を得たものの、産油国などの反対により合意には至らず、枠組みの方向性の確認に留まっています。
これらを考慮すると、世界全体でのGHG排出量削減は、国単位での脱炭素取組に委ねられる部分が大きくなると予想されます。
脱炭素経営に取り組む企業に求められることとは?
企業の皆さまとお話ししますと、アメリカにおける「脱・脱炭素」への方向転換などの世界的な潮流から、自社の脱炭素の取組み方に悩みをお持ちの印象を受けます。
しかし、サステナビリティ基準や排出権取引の適用が迫り、かつCOP30でネットゼロに向けた立場を改めて明確にした日本では、今後は今までと同等かそれ以上に、脱炭素が求められる社会になると考えられます。
こうした中では日本の企業の皆さまは、引き続き脱炭素経営を推進していくことが求められます。
COP30のような国際会議での議論を踏まえると、企業としてできることには限りがあると感じるかもしれませんが、例えば、事務所におけるこまめな消灯、空調の設定温度の調整などは立派な省エネ活動です。
ただし、省エネ活動に取り組んでも、どの程度会社としてGHG排出量を削減できているかを“見える化”できていないと、脱炭素経営としては不十分です。
第一歩として自社の排出量の“見える化”を行い、自社の“現在地”を明確化することが、脱炭素経営の近道であり、重要な取り組みとなります。 今回のCOP30の開催を機に、皆さまもいっそうの脱炭素経営の実践に踏み出してはいかがでしょうか。
脱炭素は、今や企業にとって
避けては通れない課題です。
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