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事業継続計画(BCP)・事業継続マネジメント(BCM)に関する取り組みの公表について ~2016年度・2024年度調査結果の比較~【RMFOCUS 第96号】

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[このレポートを書いたコンサルタント]

小林 裕子
会社名
MS&ADインターリスク総研株式会社
部署名
リスクコンサルティング本部 リスクマネジメント第四部
BCM第三グループ
執筆者名
上席コンサルタント 小林 裕子 Yuko Kobayashi

2026.1.5

要旨
  • BCP・BCMへの取り組みに関する公表について、日経225銘柄の有価証券報告書を対象にした調査を行い、前回調査(2016年度)と比較した。
  • 「BCP・BCMに取り組んでいる」旨が分かる記載は30.2%から86.7%と大幅に増加、取組内容の項目別記載率もすべての項目で増加し、内容が充実していることが分かった。
  • 公表内容から、BCP・BCMにかかるトレンドを紐解き、有効な取り組みを紹介する。

1. 調査の目的・経緯

MS&ADインターリスク総研では、2016年度に日経225の構成銘柄である企業225社を対象に、「有価証券報告書」「HP等」を対象として、BCP・BCMに関する公表の実態を調査した。当時の調査結果では、有価証券報告書にBCP・BCM取組に関する記載のあった企業は全体で30.2%であった。また、BCP・BCM取組に関する記載のあった企業のうち、取組内容にも言及していたのは 27.9%であった。

その後実施した当社の別の調査注1)ではBCP策定率は年々増加しているものの、BCP・BCMに関する取り組みを不特定多数に開示している割合は減少傾向であった。一方で、BCP・BCMに取り組むメリットとしては「顧客からの信頼の維持」「株主からの信頼の維持」「ブランド・風評を守る」等が挙げられており、取り組みを開示することは上記に資するはずであり、矛盾する結果であった(調査結果は脚注1)リンク先参照)。

そこで、実情を把握すべく、日経225の構成銘柄である企業225社(2024年9月時点)を対象に、前回調査時と比較して公表が進んでいるか、公表内容に変化があったかを把握する目的で、BCP・BCMに関する取り組みの公表実態を再調査した。 本稿ではその調査結果の概要を紹介する。また、公表内容からBCP・BCMのトレンドを紐解き、有効な取り組みについても言及する。なお、2016年度調査時は「有価証券報告書」と「HP等」を調査対象としたが、本稿における調査対象は「有価証券報告書」に絞っているため、留意していただきたい。

2. 自社BCP・BCM取組に関する公表の有無

「有価証券報告書」において、「BCP・BCMに取り組んでいる」旨が分かる記載の有無(BCP、BCM、事業継続性の確保、の言葉を含むか)を調査した。前回調査時に記載のあった企業は全体の30.2%であったが、今回調査では86.7%まで増えていた。さらに、記載のあった企業をセクター注2)に分けて記載率の変化を調べた結果、すべてのセクターで記載率が上がっていることが分かった(図1)。

【図1】BCP・BCM取組に関する公表の有無 2016年度/2024年度比較(MS&ADインターリスク総研作成)
【図1】BCP・BCM取組に関する公表の有無 2016年度/2024年度比較(MS&ADインターリスク総研作成)

3. 自社BCP・BCM取組に関する公表内容

「BCP・BCMに取り組んでいる」旨が分かる記載があった企業のみを対象に、「有価証券報告書」におけるBCP・BCM取組に関する公表内容を、2016年度調査時と同じⅰ~ⅶ、ⅹの項目と、「ⅷ)BCPの見直し・充実化」「ⅸ)訓練実施」の2項目を加えた10項目を対象として調査した(表1)。

「ⅷ)BCPの見直し・充実化」「ⅸ)訓練実施」の2項目を加えた理由は、「第9回 事業継続マネジメント(BCM)に関する日本企業の実態調査報告書」(2022年2月・MS&ADインターリスク総研調べ)により、新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえて、既存のBCP等の見直しを約70%の企業が完了/実施中/検討中であったこと、また、BCPに関する訓練を「全く実施していない」と回答した企業が、36.4%から25.9%に減少していたことから、調査対象企業においてもBCPの見直し、充実化や訓練を実施・公表している事例が増えているのではないかと推測したためである。

(1) 項目別記載率

2016年度調査時の7項目においては、すべての項目で記載率が上昇していた。また、今回追加した「BCPの見直し・充実化」は28.4%、「訓練実施」56.4%と調査項目の中では比較的高い記載率であった。記載の多い項目としては、「訓練実施」「ユーティリティ強化」で、半数近くの企業において記載されていた。

また、2016年度調査時は記載が認められなかった「基本方針」や「第三者認証取得」についても少数ながら記載が認められた。さらに、今回の調査項目以外の項目をまとめた「その他」の取り組みも26.7%の企業で確認でき、各社様々な取り組みを実施・公表していることが分かった(次頁図2)。

【表1】公表内容の分類項目

【表1】公表内容の分類項目

※1 2024年度追加調査項目
※2 訓練については防災・BCPに関係する訓練を対象とし、標的型メール訓練等や事故・インシデント対応等の危機対応を目 的とする訓練は対象外とした

【図2】BCP・BCM取組に関する公表内容項目別記載率 2016年度/2024年度比較(MS&ADインターリスク総研作成)
【図2】BCP・BCM取組に関する公表内容項目別記載率 2016年度/2024年度比較(MS&ADインターリスク総研作成)

(2) 具体取組

各社の具体的な取り組みについて、記載内容を紹介する(表2)。2016年度も調査対象項目としていた「ⅳ)ユーティリティ強化」「ⅴ)機能(拠点)の二重化」「ⅵ)サプライチェーン強化」「ⅶ)第三者認証取得」のうち、青字は2024年度調査において新たに記載が確認できた内容である。取組内容への言及は具体化・多様化しており、2016年度調査時より各企業の取り組みが深掘りされていることがうかがえる。また、サプライヤーやグループ企業など自社だけでなく関係先を巻き込む取り組みや、新型コロナウイルス感染症の流行によりリモートワーク等の働き方や勤務環境の変化に合わせた取り組みが増えていることも特徴的であった。

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