コラム/トピックス

IUCN RHINOアプローチとSTAR指標のアップデート概要

2026.1.23

国際自然保護連合(IUCN)は2025年10月に開催されたIUCN世界自然保護会議においてIUCN RHINO(Rapid High-Integrity Nature-positive Outcome)アプローチを発表した。本アプローチは、種と生態系の保全効果を最大化することでネイチャーポジティブを達成することを目的に、企業を含むあらゆる組織が、「どこで活動すべきか」、「どのような行動をすべきか」、「どのように進捗を測るべきか」を示している。

RHINOアプローチは、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のLEAPアプローチ※1を基盤として、「Implement(実行)」と「Report(報告)」のステップを独自に追加することで、「リスク評価→行動計画→実行→インパクト測定→公表」までを行えるように設計されている。

さらに、組織が自然との接点を把握し、ネイチャーポジティブな取り組みを導くために以下の3つのインパクトトラックを提供する。

(1)Track A:直接インパクトトラック(該当業種例:採掘業、林業、農業、建設、インフラ、再生エネルギー発電など)

直接操業によるインパクトを対象にしたアプローチで、6つのステップ(A1: Locate, A2: Evaluate, A3: Assess, A4: Prepare, A5: Implement, A6: Report)から構成される。

(2)Track B:バリューチェーンインパクトトラック(該当業種例:コーヒー・パーム油・鉱物などの原料調達企業、食品・飲料メーカー、繊維、商社、エネルギー利用企業など)

バリューチェーンを通じたインパクトを対象にしたアプローチで、企業の調達先のトレーサビリティの状況に応じて3つの方法を提示している。

① サイトレベルで特定できる場合:サイトごとにTrack AのA1~A6のステップを適用する。

② 国や自治体レベルでしか特定できない場合:生物多様性へのインパクトが大きい地域とコモディティの組み合わせを特定し、自社の調達割合を考慮して優先地域を選定した上で、Track AのA2~A6を適用する。

③ 空間情報が限定的の場合:主な生産国や生産企業を特定し、インパクトの高い地域を優先して絶滅リスク低減の目標を設定し、Track AのA3~A6を適用する。

(3)Track C:投資家インパクトトラック(該当業種例:銀行、保険、投資ファンド、年金基金など)

金融ポートフォリオ通じたインパクトを対象に、2つのアプローチを提示している。

① 投資シェアアプローチ:投資先企業に対して情報開示や報告の要件を設定し、投資先が自社のバリューチェーン内で必要な行動を実施していることを確認。

② 投資先企業の進捗評価:投資先企業をIUCN RHINOトラックの進捗状況に基づいて評価・スコア化し、各社の進捗やポートフォリオ全体のパフォーマンスをモニタリングする。

本アプローチは、STAR(Species Threat Abatement and Restoration)指標※2を活用しており、各ステップごとに応じてSTAR指標を調整して使用している。具体的には、IUCNが公表している推計値(Estimated STAR)を用いて対象地域の状況を把握し、次に現地調査や専門家評価を反映して調整値(Calibrated STAR)を算出する。その後、将来の目標値(Target STAR)を設定し、実際の活動によって得られた成果を実績値(Realised STAR)として記録する。

このSTAR指標は精度向上と利便性のために11月にアップデートされ、以下のような改善が加えられた。これらは、STAR指標の可視化が可能なIBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool)が提供する「IBAT Species Report※3」で確認できる。主なアップデート内容は以下のとおり。

  1. データの解像度が25倍向上し、1kmメッシュで分析可能になった。
  2. 対象種が拡大し、哺乳類・鳥類・両生類に加えて爬虫類も含まれるようになった。
  3. 最新のRed Listデータに対応し、より新しい情報で分析できるようになった。
  4. 対象種ごとのSTARスコアへの貢献度や脅威要因が可視化され、どの対象種を優先して保全すべきか、またどのような脅威を減らすべきかを特定し易くなった。

これらの改訂によって企業は、どこが重要か(空間精度)、なにが重要か(種・脅威の特定)をより正確に判断できるようになった。また、2026年公表予定のレポートでは、現地調査を反映した調整が可能となり(Calibrated STAR)、企業ごとに最適化された保全活動の計画・評価ができるようになる。

自然関連のリスクと機会を把握するには、拠点単体でなくバリューチェーン全体の視点が欠かせない。RHINOアプローチとSTAR指標は、対象拠点周辺の自然の状態の定量的な理解、行動すべき場所や活動の特定、その成果測定までをワンストップで支援する。ただし、現地の状況を踏まえた効果的な取り組みを推進していく上では、机上のデータ分析だけでは不十分であり、現地パートナーの知識や一次情報を反映したCalibrated STARやRealised STARを算出する必要がある。そのため、まずは自社事業における優先地域を特定し、現地ステークホルダーと協働してモニタリング体制を整えることから始めることが重要である。

※1)LEAPアプローチとは、TNFDが提示している、企業および金融機関における内部の自然関連課題の特定と評価をサポートすることを目的とした自主的なガイダンスである。Locate、Evaluate、Assess、Prepareの4つのフェーズから構成される。
※2)STAR指標とは、IUCNレッドリストのデータをもとに、保全・復元活動による種の絶滅リスク低減効果を定量化した指標である。
※3)https://www.ibat-alliance.org/services

【参考情報】
2025年12月3日付 IUCN RHINO HP
https://www.iucnrhino.org/
2025年12月3日付 IBAT HP
https://www.ibat-alliance.org/news/species-report
2025年10月10日付 IUCNリリース
https://iucn.org/press-release/202510/iucn-launches-new-rhino-approach-rapid-high-integrity-nature-positive-outcomes

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